第3回 郷土料理を切り口にした食育

現在、日本は食料の多くを外国からの輸入に頼っています。しかし、安全で安心できる食生活が求められているなか、その土地で収穫される食材を使って受け継がれている「ふるさとの味=郷土料理」が改めて見直されています。環境問題の視点から考えても、「地産地消」は消費者と生産者の食材の輸送距離が短いためエネルギー消費も少ないという利点もあり、全国各地で取り組んでいます。地場産で新鮮な旬の食材を生かした郷土料理を、食育の教材にしませんか。

郷土料理は土地の誇り 歴史や文化に深い関わり

郷土料理は、その土地ならではの伝統料理のことです。他の地域では見られない食材や、独特の味つけ、特別の調理法で作られ、土地の人々の誇りとして長い歳月をかけて伝えてきた大切な食文化です。郷土料理には、普段の料理と特別な日の料理があり、最近は健康食としても注目され町おこしや郷土料理保存会の運動も各地で行われています。

四方を海に囲まれ北から南にかけて細長い日本の地形は、気候風土の変化に富み、豊かな山・海の食材に恵まれています。地理的条件、季節(四季)により収穫される山・海の食材は、郷土に暮らす人々の歴史や文化など深い関わりがあります。

栄養教諭・栄養職員は「食文化の継承」の教材に

食育基本法では、日本人の健康な心身を育んできた「食文化の継承」が、食育の目標の1つに掲げられています。学校給食に地域の産物を使用すると共に、それらの産物を使用した郷土料理を積極的に取り入れ、食に関する指導の教材として、各学校の栄養教諭・学校栄養職員は実践に活用するように求められています。

平成21年2月に、文部科学省委託事業「郷土料理等を活用した学校給食情報化推進事業」として、社団法人全国学校栄養士協議会がまとめた「郷土食の料理集【全国版】-学校給食から伝えていきたい日本の味」と「郷土料理を活用した指導事例集【全国版】-学校給食から広げる食育」が発刊されました。これは47都道府県の学校給食の献立に使用されている、地場産物を活用した郷土料理を教材として食育で活用できるように、指導案、(校内)放送用資料、一口メモ付で、作り方と子どもが作るための手順がまとめられています。ホームページでも広く紹介され、全国の方々に全国の郷土料理に関心を持っていただくことを願っています。

また、平成19年12月に農林水産省が発表した「農山漁村の郷土料理百選」も、地産地消が郷土料理のふるさと自慢、土地自慢の味であると推奨しています。

郷土料理に受け継がれた生活の知恵

郷土料理は、毎日の生活のなかで食べられる料理と、正月・お盆・祭事などの行事や、結婚式・葬式・記念日など特別な日にご馳走として食べられる料理が数多くあります。

調理方法もさまざまですが、伝統的な調理方法である刺身・生食・焼く・煮る・炊く・和える・蒸すと、揚げる・炒めるといった比較的新しい調理法を組み合わせて作られています。

海に近い地域の刺身・魚料理、山村での山菜づくし、寒冷地での鍋料理など地域の気候や風土で調理方法や食べ方はいろいろですが、例えば暖かい気候の九州・四国地方では豊富な刺身・魚料理の他に、保存のために油で加熱した「つけ揚げ(さつま揚げ)」は生活の知恵として工夫され、祭りや祝いの膳に添えられる名物料理となって受け継がれています。

私のふるさとは茨城県ですが、徳川家の城下町として栄えた水戸には「煮合い」という郷土料理があります。ゴボウ・ハス・たけのこ・にんじん・しいたけなどを油で炒めた後にお酢を入れるのですが、暮れに作り置きし、お正月のごちそうの箸休めとして重宝します。お酢が入っているので日持ちもよく、これも生活の知恵です。

全国の郷土料理を体得できる、それが食育の醍醐味

その土地で収穫される魚介類、作物は、気候・風土を合わせ、漬ける・乾燥させるなど、土地の人々の知恵と工夫で保存食となり、郷土料理となっています。

学校給食でも使用する「凍みどうふ(高野豆腐)」は、長野県の「凍みどうふ料理」として有名です。信州の厳しい寒気を利用して作られる保存食の「凍みどうふ」は、かつて農閑期の副業として作る農家の方々の仕事でした。今は工場化が進み全国一の生産高となり、郷土料理「凍みどうふづくし」があります。

郷土料理のなかには、食材を保存する必要性から生み出され、現在まで受け継がれてきたものがたくさんあります。郷土料理を食べる時には、その料理に込められた歴史や文化、土地の方々の知恵と工夫を感じながらいただきましょう。

学校給食でも、季節を考えながら全国の郷土料理を取り入れていることと思います。私が学校給食の現場で働いていた時には、11月に北海道の郷土料理「鮭のチャンチャン焼き」を給食に取り入れた思い出があります。子どもたちと共に野外で食べましたが、これは東京にいながらにして「北海道の大自然を体験したつもりになろう」という目的もありました。自分の生まれた土地以外の場所にも、素晴らしい郷土料理があることを子どもたちに伝えることには大変意義があります。学校給食で体験したことは、いつかそこの場所を訪れた時に「学んだことを行動で理解する」ことにつながります。そこが教育であり、体得させる食育の醍醐味です。

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