第22回 子ども達の声援がパワー、災害を乗り越えて

和歌山県新宮市立千穂小学校 栄養教諭・真砂美紀さん

南北に長く海、山、川に囲まれた和歌山県。
ここ新宮市は、三重県、奈良県との県境にあり、熊野川の河口に開けた街で、かつては熊野三山のひとつ熊野速玉大社の門前町として、江戸時代以降は城下町として栄えてきました。千穂小学校は校名のとおり千穂ケ峰の麓に位置し、世界遺産の神倉神社、熊野速玉大社にはさまれた閑静な地域にあります。

自作の歌で始まる給食の準備

本校では、給食室からおいしそうな給食のにおいがしてきて、お昼のチャイムがなると…
「手を洗おう!水でぬらそう、石鹸をつけよう!
アワアワ、アワアワができたかな?
じゃあ、いくよ! 
手のひら、手のひら1.2.3
手の甲、手の甲1.2.3
指の間、指の横1.2.3
手首、手首。指先も忘れずに
ぐるっとまわして ジャブジャブジャブ
ヌルヌルをとろう ジャブジャブジャブ
ジャブジャブジャブジャブ
はい!きれいになりました。」の曲がながれます。
この歌は作詞養護教諭、作曲教務主任、歌っているのは合唱部の子どもたち。このCDがかかると子どもたちは、歌を口ずさみながらていねいに手を洗います。

5年生の米作りの授業を担当

和歌山県は栄養教諭の配置があまり進まず15名です。身分が変わることで自分の意識が大きく変わりました。授業を担当することも増え、今年度は5年生の社会科で米作りについての授業にかかわりました。この学年は去年から総合の時間「地域の食材を知って地域を知ろう」、給食週間中のテレビ撮影等でつながりが濃く、私の家の米作りの話を興味深く学習してくれました。そして「給食に使われている地元のコシヒカリ。私の家のお米を食べてね」と話しました。

台風被害で給食運営にも危機

ところが、9月の台風12号で田んぼや、刈り取った米が水害にあいました。自宅も5メートル浸水してしまいました。
どしゃぶりの雨の中、2階の窓から避難して無事でしたが、前日から停電、断水、電話も通じません。道路は寸断され周りの情報もなく、学校にも、親戚にも連絡の手段がありません。次の日ヘリコプターが飛んでいるのが見えました。後で町内の方が何人か亡くなったと聞きました。
3日後、いつもは30分足らずで行き来できる新宮の街から4時間半かけて親戚の人が訪ねて来てくれ、やっと私たちの安否を伝えることができました。
千穂小学校のプレハブ校舎、給食室も床上浸水。それでも5日後に学校を再開、10日後には給食を再開することができました。しかし地元のコシヒカリ、牛乳が使えなくなり、やがて牛乳屋さんは廃業することになり子どもたちは残念がっています。
近隣には給食の再開に3か月かかった学校、まだまだ再開のめどが立たず他町の給食センターから配送を受けている学校、学校ごと間借りしているところもあります。

子ども達の声にパワーをもらう毎日

現在私は夫の実家に避難しています。学校までの道路は22か所で崩落や欠損があり、9か所の信号で片側通行ができるようになりましたが、復旧には何年かかるかわからないと言われています。
厳しい毎日ですが「今日の給食何?」、「おいしかったよ!」…子どもたちの声に毎日のパワーをもらい安心、安全、でおいしい給食を作ります。給食をお手本に自分で考え、自分で選んで食べる力をつけてくれることを願って。

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