第28回 地場産物から広がる食育

鹿児島県立鹿児島盲学校 栄養教諭・飛松佳子さん

「みぞれって大根おろしのことかあ」と、魚のみぞれ煮を一口食べた児童が納得したようにつぶやきました。視覚障害のある児童生徒は、口に入れた感覚で食べ物が何かを認識します。煮崩れしたものは素材の味がわからなくなるので、野菜は、機械を使わず手でむいて手で切って調理します。
本校では7割の児童生徒が弱視です。そのため見た目にもこだわり、弱視の児童生徒にも伝わるよう、色鮮やかな盛りつけを心がけます。特にトマト、赤ピーマン、小松菜はよく使います。

地域の生産者が支え

汁椀にじゃがいもだけ残している生徒がいたので理由を聞くと、「おいしいから最後に食べる」という答えが返ってきました。このじゃがいもは地域の81歳の生産者から納入していただいたものです。確かにおいしいのです。見た目はおかしく、下処理に時間がかかりますが、味がよく安全で安価です。
しらす干しの組合の会長さんからは、しらす干しが届きます。毎月の献立に、高級食材のしらす干しをふんだんに使った料理が加わり、児童生徒は感謝しながらいただいています。学校給食甲子園で入賞した「しらすぼしのかき揚げ」や、じゃがいもとチーズの相性が絶妙な「しらすぼしとポテトのグラタン」、ごはんがすすむ「しらすぼしのいそ風味」などはとても好評です。

「おいしい」と笑顔の相乗効果

地産地消、地場産物活用、自給率の向上などが叫ばれて久しいですが、地元産は理屈抜きにおいしいのです。「おいしい」と言う児童生徒の声を生産者に伝えると、さらに仕事に精が出るようで、笑顔で納入されます。益々おいしくなり、児童生徒の食べ方がかわります。地元産の食材は彼らの舌を満足させているようです。
点字を学習する児童がいますが、なかなか覚えられないような時、その子の大好きな「からあげ」などから練習を始めます。食べることが好きなので関心も高く、慣れてきたら献立表を点字で打つなど、学習を広げていくことができます。今度は、生産者の方にお礼の手紙を書くそうです。地元産を使うということは、様々な効果やつながりが広がることだとつくづく感じます。

毎月1週間の食育週間

本校は全校児童生徒が一堂に会して、木のテーブルといすのある食堂で給食を食べます。グランドピアノも置いてあります。毎月19日をはさむ1週間は食育週間と決めて、生活委員会の運営による児童生徒の一口メモの朗読があります。発表のよい機会ととらえ、読み手は一生懸命練習し、聞き手は静かに聞いています。2学期、3学期の給食の最終日には、音楽部によるランチコンサートがあります。その日は一食257円の給食が、レストランで食べる1,000円のランチに思えます。
彼らの研ぎ澄まされた味覚と臭覚、聴覚、唇の感覚、そして視覚に負けないようにと、日々戦いの連続です。

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