第29回 人との繋がりを学んだ学校給食

奈良県奈良市立飛鳥小学校 栄養教諭・上村庸江

今年で勤続31年。これまで4つの小学校と1つの給食センターを経験しました。そのたくさんの出会いの中で、私を大きく育ててくれた給食調理員との出会いがあります。

一人で始めたランチルーム作り

3校目の小学校での事です。何とかして、給食について発信できる部屋が欲しい。ランチルームが欲しい。そんな思いで校舎内を歩くと、ありました、教材室が二つ。中の様子は、一教室で収まりそうな教具の量。さっそく管理職の先生に相談したところ、「いいよ」という回答をもらい、片付けにかかりました。しかし、最初は一人で。
そのうち、何をやっているの?と声をかけて、荷物の移動を手伝ってくれた先生。壁や窓を児童の作品で飾ってくれた先生。夏休み中、教室にワックスをかけ、テーブルクロスや椅子カバーを作ってくれたのは調理員でした。みんなの力で手作りのランチルームを作ることが出来ました。

今年9年目の親子料理教室

いつも、悩んで話をすると、一回やってみようと背中を押してくれるのも調理員でした。時には、言い争うこともありましたが、料理への思いを話してくれたり、料理のコツを教わったりしました。そんな中、「子どもや、お母さんに給食の献立を教えてあげたいな。一緒に料理教室やろうよ」と、ある調理員から相談されました。それって立場が逆では?…と思いながらも始めた公民館の親子料理教室は、今年で9年目になります。

父親や祖父母の参加も

永年単独校に勤務し、給食を食べる子ども達や先生が目の前に当たり前のようにいた環境から、栄養教諭として給食センターへの勤務になったとき、それまでと違う距離感を感じたこともありました。でもこの料理教室で、食事を通して伝えることの大切さをさらに強くしました。
給食を知ってほしい、手作りの良さを伝えたいと始めたものでしたが、今では私にとって、人と人の繋がりを感じさせられる大切な場になっています。
子ども達は、お母さんと、時にはお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんと参加することもあります。お母さん方は自分のペースではなく、子どもたちに合わせて、野菜の切り方を教えたり、包丁使いを見守ったりされます。慣れないお父さんも回を重ねるごとに、調理を楽しむようになってくれます。参加したあるおじいちゃんは、孫の調理姿を一生懸命に写真に収められ、その様子は大変微笑ましい姿でした。そして「前回の料理、家で作りましたよ」の声に元気づけられています。

調理員との二人三脚

家族がそろって食卓を囲む機会が少なくなってきている現在です。調理を通して五感を磨き、人との触れ合いを深めてほしいと願っています。人は、一人では大きくなることはできません。栄養士も一人の力では何も始められません。調理員との二人三脚で始めた料理教室。これからも出会いを大切に、活動を続けたいと思います。

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