第60回「『食文化』の伝播者として」

愛知県小牧市立小牧中学校 栄養教諭・林紫

私の勤務する愛知県小牧市は、名古屋市の北方15キロメートル、濃尾平野のほぼ中央に位置する人口15万3千人の都市です。海から遠い本市は、昔から魚を貴重な食材として大事に扱ってきました。

育まれてきた独自の食文化

「小牧菜どころ、米どころ」と呼ばれる緑豊かな田園地帯の特徴を生かし、あじ寿司、さば寿司、秋刀魚飯など、海の魚を取り入れた独自の食文化を育んできました。
給食では、地域で受け継がれている郷土食や行事食、特産物を積極的に取り入れています。伝統にのっとって再現したり、現代の食のニーズに合わせてアレンジするなど様々な方法をとっています。

ドキッとする一言

ある時、地元の郷土料理研究家と知り合う機会があり、お話をしていくうちにドキッとすることを言われました。「三世代同居が当たり前、隣近所が身近であった昔は、生活の中で食文化が自然に伝承されていましたが、今は核家族化や転勤などで伝承することが困難です。由来や作り方など発信することは、とてもいいことですが、『これ、間違ってる!』って思うことがあります。小牧市は多くの人々が転勤等で移り住んでいます。誤った情報が語り継がれることに憤りさえ感じます」と…。
食文化の伝播者として、給食だより、校内放送、ホームページ、広報誌など多くの手段を駆使して啓発しています。ですから情報をきちんと収集し、正確に伝えなければ、誤った伝統を伝えてしまうことに気づき、身が引き締まる思いをしたことが忘れられません。

給食を正しい情報源に

中学校の家庭科には地域の食材や郷土料理、食文化を学習する単元があるため、地域の食材を使用して調理実習を行っています。家庭科の教科担任は地元出身者ではないことが多いため、学校給食に登場する郷土料理やインターネットで検索した情報をもとに授業を行います。
情報を発信する立場の栄養教諭・学校栄養職員も同様です。ドキッとしたあの時のことを忘れずに、また、後輩にもこの経験をきちんと伝えていくことが自分の責任であると感じています。

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