第65回「食育の種まき」

東京都小金井市立東小学校 栄養教諭・島崎聡子

グリンピースや空豆のさや取り、とうもろこしの皮むきなどの学習は多くの学校で取り組まれていることと思います。食べ物の旬を知る、生産者や調理する人たちへの感謝の気持ちをもつ、その野菜を食べようという意欲をもつ等のねらいがありますが、何よりも実物に触れることそのものが一番の学びです。「本物に勝るものなし!」毎回その気持ちを新たにします。

皮むきができなくても

本校では毎年、1年生がとうもろこしの皮むきを行っています。地元小金井市産ならではの新鮮なみずみずしさが味わえます。ところが、今年度は予定していたその時期に風邪などによる欠席が増えたため、皮むきが中止になってしまいました。学校給食の安全管理のためには仕方ありません。
そのかわり「とうもろこし博士になろう」と題して学習することにしました。「花は2つある」、「ひげの数は実の数と同じ」。急遽届けていただいた根つきのとうもろこしを、近くで見たり触ったりしながら、子供たちはじっくり観察することができました。

地元の協力で本物に触れる

前日の急展開にもかかわらず根つきのとうもろこしを届けていただけたのは、地元の生産農家さんのご理解あってこそ。感謝の気持ちでいっぱいになりました。
子供たちの観察カードには、とうもろこしのダイナミックな絵が描かれていて学級担任も感嘆の声。皮むきはできなくても、本物で得られる感動の素晴らしさを改めて感じました。

上級生から意外な反応

給食の時間、1年生が全員きれいに食べたことは言うまでもありません。でも、2年生の教室でも意外な反応があったことを後で知りました。
毎日配布している一口メモに、例年なら「1年生が皮むきをしました」と書いているはずなのに、今年は書かれていないことに2年生が気づきました。「皮むきをしなかったんだね」「誰が皮むきしたのかな」「調理員さんだとしたら大変だっただろうな」「残さず食べよう」と。

体が覚えていた食育

2年生は、1年生の時の経験を覚えていました。きれいにむくのが大変だったこと、むいたとうもろこしを入れたざるがとても重かったこと、給食室に運んで届けたこと、調理員さんが「むいてくれてありがとう」と言ってくれたこと。体感したからこそ記憶が残り、感謝の気持ちが育っていることを感じました。そのことを伝えてくれた学級担任の気持ちもうれしくなりました。

種をまくこと

食育の効果は、数値で計れるものもあれば、20年、30年後に現れるものもあります。ささやかな取り組みでも、その時々の経験の積み重ねが、無意識のうちに育てられ身についていく、これも食育の姿なのだと思っています。
今、目の前にいる子供たちがどのような大人に育って欲しいか、その姿を描きながら、これからも日々「食育の種まき」を続けていきたいと思います。種が芽を出して育っていくことを念じて。

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