栄養士コラム

第110回「自分の戒め~精進する心を忘れない」

宮嵜眞理子

熊本市立学校給食東共同調理場 栄養教諭

宮嵜眞理子

初任は離島の中学校でした。大学を卒業してすぐの私は、学んだ理想論と現実とのギャップに悩み、研究室の教授に電話をして相談することも度々でした。教授からは「机上の空論になるな。学んだことを現実とつきあわせ応用していくことがプロだ」と叱られました。

子供たちに教えられた仕事への向き合い方

就職して初めての卒業式。自分の卒業式でも泣かなかった私が、声を出して泣きました。子どもたちと笑い、悩み、泣きながら共に歩む中から自分の仕事に対しての向き合い方を教えてもらったような気がします。そして仕事に対するプライドも生まれてきました。
栄養教諭としての職務は初任の頃から比べれば想像もしなかったほど多岐にわたり、これほどパソコンの技術が必要になろうとは夢にも思わず、苦労している昨今です。「エビデンス」という言葉を知ったのは何年前でしょうか。統計学も勉強しなければ!
あれも、これもと思うと頭をかきむしりたくなってしまいます。定年まであと数年となり、「今更、もうねえ~」と正直、ふと頭をよぎることもありますが、退職する時に自分の信念を貫き後悔しない仕事人生を終わりたいと思う自分がいるので、教わりながらでも少しは努力をしているつもりです。

食育のモットーは「自分も楽しく」

私の人生訓というべきものがあります。「人間には3種類の人間がいる。1つは職場に居て欲しい人。2つ目は居ても居なくても良い人。3つ目は居てもらいたくない人」。
みなさん如何ですか?私は栄養教諭として学校に、調理場に居て欲しい人になりたい。そして子どもたちにも「先生に居て欲しい」と思われるような栄養教諭になりたいと思っています。その1点に支えられています。給食を作ることでは「子どもに食べさせてあげたい給食を」。食育では「自分も楽しく活動できる」がモットーです。

食育月間に新たな2つの取組

中学校で昨年度から6月の食育月間に①食育カルタ②給食のなぜ?どうして?という2つの取組を始めました。
大規模校のため、1人が1枚のカルタを作ることはできませんが、学級で2枚の読み札と取り札を作ってもらいます。学級の給食委員がリーダーシップをとり、今年度も第2回目を実施。プラットホームに全てを掲示しました。1回目より数段レベルアップです。取り札の絵もなかなかのものです。
先生方が「できとる。できとる。ほう~よかとのできとるですね。先生!」と写真を撮られる姿を見て、来年度も学校の年間行事で続けたいと考えています。
2つ目の「給食のなぜ?どうして?」は生産者や調理員、栄養教諭等に疑問を投げかけ、それを担当者が一人一人に回答するものです。この取組も昨年度より3倍増の質問が届きました。回答するのも一苦労ですが子どもたちが書いてくれたものには誠実に真心で返すことを信条に、回答を書いているところです。

助けてくれたのは子どもたち

給食も食育もどちらもキャッチボールが必要です。そして継続です。食育の足跡はすぐに見えてきませんが、それでもあきらめず、自分ができることを精一杯継続していくことだと思っています。私は何度も「これでよいのか?子どもには伝わっていないのではないか?」と思いましたが、そんな時に子どもたちが絶好のタイミングでささやくのです。「先生!おいしかったよ」「先生の食育の授業、楽しかったよ」と。
「子どもってわかっているのかな?つまずきそうになった時、私を助けてくれたのはいつも君たち。ありがとう!感謝の気持ちを伝えたいのは私の方だよ」~その心をもって明日も走り回り大声を出しながら調理場と学校を駆け回っているのでしょう。「どうぞ美味しい給食ができますように」