“食育サミット”で国にボトムアップ

地域、行政、学校、家庭それぞれに定着しつつある「食育」ですが、それぞれの役割がまだ明確ではないのも事実です。かつては衆議院議員として、国政にも携わっていた料理研究家の藤野真紀子さんに、女性として、母親として、子どもたちの未来のために今何ができるのか、またどのような心構えでそれぞれの持ち場が「食育」、「子育て」を進めたら良いかお聞きしました。

藤野真紀子さんの顔写真藤野真紀子(ふじの・まきこ)
東京都出身。料理研究家、料理教室「マキコフーズ・ステュディオ」を1992年より主宰。聖心女子大学文学部(フランス史)卒業後、結婚。夫の赴任先パリのホテル・リッツ内にある料理学校でディプロマを取得。05~09年には衆議院議員としても活躍。「とっておきのプレゼントお菓子」(主婦と生活社)などのお菓子本、料理本、エッセイを幅広く執筆。

Q:国政に携わって意識変化がありましたか

少子高齢化などの問題を背景に、食育基本法は必要があったからできた法律です。個人レベルで問題を認識し、努力しなければならない部分もありますが、国が動き仕組みを作り整備しなければいけないことも社会にはあります。個人と国の両輪が動かなければ成立しない問題が食育です。
女性が働くことが当たり前になった一方、母親が不在で、食事を含めた子育てをどのように社会全体で見ていくかという問題があります。本来、子どもたちにとって家庭は、生まれて初めて出会う小社会で、そこで社会性を身につけて幼稚園や保育園へ行くことになります。今はこれができにくくなっているのが現状です。
安心した家庭ができることで食育も成り立つ。改めて、私がいたポジションは非常に大きなものだったと気がつきました。

Q:そのために何か具体的な案は

私たち団塊の世代の活用も一つのアイデアですね。ある学生が、学童保育のなかに「放課後食堂」を作ろうという提案をしました。私たち団塊世代がその食堂を切り盛りし、お母さん代わり、家族代わりとなり食事をするシステムです。自分だけでなく他に人がいてはじめて子どもたちの食事には意味があるのです。同世代、異世代と交流する大切さもあります。私の家庭は大家族だったので、いつも人で育ててもらったと思っています。
もう一つは、引きこもりの子どもたちに私たち世代がご飯を作りに行く、「出前食堂」のようなものをできないかと考えています。ごはんを作る姿を見てもらい、一緒に食べよう、食卓を囲もうというものです。

Q:「食卓」は人間形成に影響ありますね

自分の子育てをふり返ると、料理が好きだから食の仕事を始めたのに、仕事のために家族の食卓をおろそかにしてしまった経験があります。きちんと食事を作って仕事に行っても「用意してあればいいの?」と子どもに叱られました。子どもにとっては、コンビニのご飯でも良いから、一緒に食べたいという気持ちだったのでしょう。
かつて専業主婦だった時、子どものおやつは毎回手作りしていました。子どもたちが大きくなった時、おやつを作ってと言われて少しオシャレなクッキーを作ったのですが、「これじゃない」と言うのです。子どもが求めていたものは、幼い頃に食べていたチョコレートチップ。幼い頃の思い出の味だったのです。辛い時にこれを食べたら「幸福感」が得られる、「自分は愛されている」という確認で、それが「生きる力」になったのかなと思ったことがありました。

Q:家庭と学校は食育でより連携できるのでは

校長がリーダーシップを発揮する場面は、学校の教育目標と食育をどう関連付けて先生方にお示しできるかということです。教育活動は教育目標を達成するためのものですから、食育はどの場面で貢献できるか先生方に計画してもらう。そこで重要なことは生徒たちの実態に目を向けることです。そのためにも管理職からのトップダウンと、現場から意見を述べるボトムアップが互いに機能しあう事が重要です。計画書一枚を作り上げても学校は変わりません。

Q:経験不足の栄養教諭、学校栄養士の授業サポートは?

人間形成の基盤は小さい頃の「幸福感」です。それがあれば、子育てはスムーズになるでしょう。食卓は家庭のなかのベース、家族が一緒にコミュニケーションをとる場所です。体と心を作る場所でもあります。会話することで元気になるし、食べ方がちょっとおかしい時は何かあったかなと親は思う。家庭のなかでどれだけ子どもを力強く育てられるかがキーワード。でも一人で食事をして見過ごされた子どもたちは、大きくなった時にそれが問題として爆発してしまうのでしょう。
学校では、保護者とのコミュニケーションの場を多く設けることから。親子で何かをする日を学校に設けたり、親に一日先生体験をしてもらったりして、保護者にも学校現場への理解を深めてもらうと良いのではないでしょうか。

Q:「親子手作りおやつ教室」の手応えは

私の失敗経験から、テーマは「絆」だと思いました。親子で手作りのおやつを作った経験を大切にして、一つの勇気にして欲しいのです。
子どもたちは教室で作ったおやつをとても大事にし、半分は食べずに家族に持って帰りたい、祖父母に食べさせたいと言います。お母さんと作ったという思い出の副産物として、待っている人への思いが芽生えるんだなと感じました。ある時、焼きたてのケーキを落としてしまった男の子がいました。私が作ったものをあげようとしたら、「ダメ」の一点張り。自分が一生懸命作ったものを落としてしまった経験を通じて、痛みを感じることができ情の豊かさが育ちます。こういう機会がもっと家庭にあると、教育現場と共に子どもたちをしっかり見守っていけるのではないでしょうか。
最近、環境問題、食料自給率を含めて教室で教えています。その一つとして米粉をすべてのお菓子に使っています。食育にはさまざまな視点がありますが、国の食料をどうやって守っていくか、地球環境も含めてお話しています。

Q:今後は食育にどのように関わっていきますか

料理人、料理研究家さまざまな仲間が食育に関わり活動されています。志を同じくする人が食育の一つの大きな組織を作って、1年に1回でいいので食育サミットを国内でやれないかと思っています。そこで自分の活動を報告し連帯意識を高め、来年の方向性を考え、国にボトムアップしていくことです。

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