「調理員だからこそ」できる気づきを食育に

「子どもたちの笑顔こそが、明日の調理に向かわせる元気のもと」と語るのは、日本学校調理師会理事長の小久保ユミ子さん。学校給食現場での調理を通じて、学校栄養士・栄養教諭の食育指導を支える立場の学校給食調理員(以下、調理員)だからこそ見える食育への気づき、考えられるこれからの食育への貢献などをうかがいました。

小久保ユミ子さんの顔写真小久保ユミ子(こくぼ・ゆみこ)
日本学校調理師会理事長。昭和53年~55年、埼玉県川越市の保育園で保母、55年から平成20年まで同市学校給食センター調理員。20年から社労士事務所を開業。調理師として給食用特殊料理専門調理師・調理技能士、一種衛生管理者、(社)調理技能技術センター「専門調理食育推進指導員」等を習得。

Q:ご自身の調理員としての活動、思いをお聞きします

埼玉県川越市の調理員を28年間勤めました。その間、自主的な研究活動のグループ「うつわ」の代表として、メンバーと一緒に、学校給食の先進的な取り組みをしている自治体を視察してまわりました。「次世代を担う子どもたちへのより良い学校給食とは」を研究テーマに、川越市には10年間続けて提言させて頂きました。
小学校に入学して中学校卒業までの9年間は、子どもの心と体の最も成長する時期。この時期に食べる学校給食の果たす役割は、とても大きく重要なものと思っています。この思いは学校給食に関わる全てが共通して、心に留めておきたいことです。

Q:食育推進について日本学校調理師会の目指すところは

本会は昭和48年8月、全国から118人の調理員が集まって第一回学校調理師研修会が東京・虎ノ門大和證券ホールで開催された際、「各地の学校給食の仲間と交流できる組織を作ってほしい」という参加者からの強い希望から発足した組織です。それ以来37年を経た今日、食育と学校給食への期待はとても大きなものを担っています。調理員一人ひとりの研鑽による資質向上はもちろんですが、加えて今後は、調理員が栄養教諭・学校栄養職員の補助者として、食育に一緒に取り組んでいる各地の事例などの情報を収集していくことも必要と考えます。

Q:調理員と学校給食、食育との関わりはより深くなりますか

栄養教諭制度の創設、食育基本法創設、食育推進計画など、学校給食へのニーズは社会的にも大きく変化してきました。それと同時に私たち調理員の果たす役割も大きくなっていることを痛感しています。
文科省が作成した『食に関する指導の手引』(平成19年3月)第2章「食に関する指導に係る全体計画の作成」には、「学校の教職員全体で食育に取り組む上で、学校全体の食育の目標や具体的な取組についての共通理解をもつことが必要であること」。「食に関する指導は、給食の時間、特別活動、関連する各教科等において、一部の教職員だけではなく、共通の目標のもとで、校長のリーダーシップのもとに、学級担任、教科担任、栄養教諭、養護教諭、調理員など全教職員が取り組むことが必要」と記述されています。
これ以外に、食育に関連する諸法令の中に「調理員の活用」に言及したものはなかったと思います。食育を推進する中での調理員の立場がはじめて明確になったのと同時に、調理のプロとしての自覚が求められています。

Q:具体的にはどのような食育への関わりが考えられますか

一例ですが、食育の一環で子どもたちの調理実習をする際、栄養教諭と担任だけでは子どもたちへの目が行き届かないこともあるのではないでしょうか。日常のさまざまな生活体験が不足している今の子どもたちは、調理器具のちょっとした扱いでも知らないことがたくさんあります。包丁は引くと切れることや火を加減すること、器具の上手な洗い方を知らないなど、調理員だからこその気づきがあります。このような場面で実習補助者として私たちを活用して下さることも考えられます。
調理場での調理が私たちの本分なので、栄養教諭と肩を並べて一緒に指導をするのではありませんが、食育活動に参加させて頂いて、子どもたちと身近に触れ合うことで、「明日もおいしい給食を、心をこめて作ろう」というモチベーションの向上につながることを期待します。

Q:地域での食育活動への関わりは

私個人のことですが、調理員を退職した現在でもボランティア活動で、県の生涯学習インストラクターの会や人材バンクに登録し、「栄養と料理」の分野で依頼があれば活動しています。「バランスの良い和食献立を、義務教育終了までに子どもたちが一人で調理できるように指導したい」ということが、私の生涯の理想です。
本会の会員は、多くが調理師の資格取得だけにとどまらず専門調理師資格を習得し、社団法人調理技術技能センターの食育講座を受講して食育推進員の認定も受け、調理のプロフェッショナルとして高い技能を持っています。それは学校給食の分野だけにとどまらず、地域の行政やNPOと連携した活動を行っていくことがこれからの目標です。

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