地域や教育現場に学校給食の認識を高めたい

全国の学校給食施設が参加して毎年開催される全国学校給食甲子園は、栄養教諭・学校栄養士(以下、栄養士)と調理員がペアで、郷土の伝統料理や地場の食材を工夫したレシピや料理技術を競います。2010年の第5回大会には1817校・センターが参加するなど、回を追うごとに広がりを見せています。主催する21世紀構想研究会の馬場錬成理事長に、食育や栄養士への期待をうかがいました。

馬場錬成さんの顔写真馬場錬成(ばば・れんせい)
特定非営利活動法人21世紀構想研究会理事長。東京都出身、東京理科大学卒業後、読売新聞社入社。編集局社会部、科学部などを経て論説委員など歴任。2000年同社退職、現在は東京理科大学知財専門職大学院教授。主な公職には、学校給食における衛生管理に関する調査研究協力者会議委員(文科省)、日本弁理士会アドバイザリボード委員など。

Q:学校給食甲子園のねらいは何でしょうか

学校給食の衛生管理などに関する文科省の委員を務めていることから、食育の中でも学校給食は重要な位置にあるにもかかわらず、一般にその重要性があまり認識されていないと感じていました。
そして給食運営の中核にある栄養士や調理員に、もっとスポットが当てられても良いのではないかといった思いがありました。
日本の伝統的な郷土食や“おふくろの味”など、本来は家庭が継承してきたものですが、現在では学校給食が引き継いでいるのが実態ではないでしょうか。そこにはレシピ作りから始まり、地元の生産者との話し合いなど栄養士の苦労があるのです。
食中毒を起こした学校での調査に携わって気づいたことは、事故を起こす学校・教育委員会などには、概して学校給食に対する管理職の関心が薄いという共通性があるという点です。

Q:5年間の成果をどのように感じますか

郷土の食材を利用した献立、食の安全を前提として、食文化や食育の推進に役立てることが本大会の主旨です。回を追うごとに一つの教育イベントとして受け入れられているのと同時に、その主旨は浸透していると思います。
郷土食を競うイベントという側面もあるので、参加する栄養士の皆さんは、生産者や保護者などの地域も巻き込み、まさに地域みんなの代表。特に地区代表に選ばれるような先生方は地域のリーダーです。実力を持った方々ばかりで、そのような先生方が本気で取り組んで下さっています。献立内容、料理技術、衛生管理など年々ハイレベルになっていることが分かります。

Q:良い成績を上げた学校や給食センターに共通するものは

生産者や保護者、地域の人々と学校現場の関係が密接な学校やセンターほど優秀な成績をあげています。そのような所ほど教育委員会、管理職や他の先生方、保護者などが、受賞を一緒に喜んでくれるそうです。何よりも子どもたちが一番喜んで、誇りに思ってくれると言います。「僕ら私たちは、素晴らしい給食を食べられるのだ」と。
子どもたちの食に対する意識が高くなると、残食が少なくなり、食事マナーも良くなるそうです。同時に「早寝、早起き、朝ごはん」などの生活意識が高まります。そのことでさらに調理員達の衛生管理意識も一層高まる、というプラスの相乗効果が働くのです。

Q:栄養士は重要な立場ですね

ある講演で話したのですが、管理職を別とすると、学校の中で対外的な交渉がもっとも多いのが栄養士ではないでしょうか。
食材の仕入れに生産者や納入業者とはほぼ毎日顔を合わせる他、外部委託の場合は調理員や衛生管理の関係者、学校行事やイベントに地域の方々を招いての試食会とその打ち合わせなど。多種多様な人々を相手にしてプロデュースしているのです。

Q:栄養士への期待は

これまでにも述べてきたように、栄養士は地域の食文化を担っている、食育の中心にいるのです。第一には、その意識をより明確に持って頂きたい。地域とのコミュニケーションにおいても、地産地消や食事のマナーや食文化などの食育の課題でも、栄養士はなければならない存在です。そして学校給食の提供を通じて、あらゆる切り口から子どもと食育をつなぐ出発点にいるのも栄養士ですから。
一方、時代や環境の変化に敏感になってほしい、というのが二番目の期待です。10年後の世の中は現在から大きく変わっていきます。食文化、環境や意識もそのままではありません。その変化は急速でグローバルなものです。世の中の産業構造がガラリと変わり、雇用形態や流通経路もより多様化します。もしTPP(環太平洋経済連携協定)の時代になれば、さらに拍車がかかるでしょう。栄養士だけではありませんが、そのような変化に柔軟に対応できる食育のリーダーが、これからの時代には求められます。

ページの上へ