学校給食は素晴らしいシステム、もっと大切に

現役のシェフが学校給食の現場に、献立提案から調理まで参加し子どもたちと交流する「スーパー給食」が、首都圏を中心にすでに30回以上の実績を重ねています。これを運営・実施するのは「超人シェフ倶楽部」。中嶋貞治会長は「日本の学校給食は、世界でも数少ない素晴らしいシステム。せっかくの食育の機会なのだから、もっとインフラを整備するべきでは」と力説します。

中嶋貞治さんの顔写真中嶋貞治(なかじま・さだはる)
一般社団法人超人シェフ倶楽部会長、「新宿割烹中嶋」二代目店主。1956年生れ。祖父は北大路魯山人主宰「星ヶ岡茶寮」初代料理長。「江戸の名工」他受賞歴多数。2005年、日本EU市民交流年、日伊文化交流50周年記念事業ではローマで式包丁披露、食事会、ワークショップを行う。主な著書に『新しい和の料理』(家の光協会)、『魚づくし』(柴田書店)他多数。

Q:「スーパー給食」で子ども達とはどのような交流を

子ども達とは使っている食材について…例えば地場の野菜など、給食を食べながら話をしたり、給食後に、5時間目を様々な質問に応える交流の時間にしてもらったりしています。小学生の場合は多くが高学年、また中学生になると質問も将来を考えて具体的になりますね。「どうしたらパティシエになれますか」とか、将来料理人になりたいという中学生が、親と私の店まで訪ねて来たこともあります。
子どもとの交流でよく聞かれるのが「好き嫌いはありますか」という質問。そんな時、私は「好き嫌いはありませんが、嫌いなのは“愛情がこもっていない料理”です」と応えます。どこまで理解してくれたか分かりませんが。
食事とは命の根源です。一回一回の食事を大切にすることが“食育”ではないでしょうか。大根の旬は冬ですが、その大根本来の味を知っている人は舌が覚えている。だから余り、突拍子もない料理を作るようなことはありません。

Q:「スーパー給食」の目的、事業概要は

農林水産省食育推進事業の一環で開催されている「ごはんで給食」セミナーで、参加した学校栄養士の方から依頼されて、初めて学校給食の現場に伺ったのがきっかけ。2005年からスタートし、今年7月に33回目の「スーパー給食」を行ったところです。この他、栄養士・調理員を対象にしたセミナーなども並行して行っています。
メンバーは日本料理、中華、フレンチ、イタリアンそしてスイーツまで、幅広いジャンルのシェフがそろっています。事前に教育委員会や学校の給食担当者から希望を聞きながら、私達から献立を提案し、シェフの店で試作・試食を兼ねて事前打合せを行います。
学校給食の様々な課題の解決につながる提案を行うのが目的で、心掛けているのは、出来るだけ地場の野菜を活用すること、子どもに敬遠され残菜になりがちな乾物・豆類を組み込むことです。
学校給食なので当然ですが、平日、朝早くからの作業になります。我々のメンバーには約20人のシェフがおりますが、それぞれ自分の職場を持っているので、無理なく続けられるのは月1〜2回のペース。私でも参加できたのは過去30回以上実施した中で半分位です。
さらに東日本大震災以降は、被災地への“炊き出し”も行っているのでほぼ一杯ですね。

Q:炊き出し給食はどのような様子ですか

被災地なので設備面などの制約がある中で、私達としてもどこまでのことが出来るか手探りでした。5月に福島・会津若松で行った炊き出しでは、福島の郷土料理「こづゆ」や地元野菜の「あんかけ」の他、「鮭の炊き込みご飯」や「揚げ出し豆腐」などの献立を振舞いました。
普段の避難所生活では、配給されるパンやおにぎり、カップ麺などしか食べられないので、懐かしい故郷の味で少しでも心から温めてあげられたらと思いました。
避難所では子どもからお年寄りまで、美味しいものを食べ、「おいしかった」「ありがとう」と言って下さる。学校給食も同じですが、我々は食事を通じてサービスを提供しているので、心からの笑顔をもらえることが、シェフには心の栄養になっているのです。

Q:「スーパー給食」では栄養士、調理員との交流もありますね

限られた設備や調味料を工夫して、一度に何百人分という大量調理で、月曜から金曜まで毎日続ける作業に取り組んでいる学校給食の皆さんは、本当に素晴らしいと感じます。食を通じて次代の健康と成長を担っているという強い自負がなければ、とても続けられるものではないだろうと思います。
洗浄などの下準備から一緒に作業をする中で、私たちなりに学ぶところがたくさんあります。同時に、より効率化・合理化できるのではないか、という面も見えてきました。

Q:倶楽部の今後はどのように展開されますか

食べ物に貴賤はないと言われるのと同様、高級レストラン、一流料亭から立ち食い店まで、同じ食を扱う調理人同士が一緒になって、学校給食や学校栄養士会の方達と勉強するセミナーのような場を定期的に持てるといいと思います。また「スーパー給食」は60回ごろを一つの区切りと考えています。それまでの経験から意見をまとめ、文部科学省、農林水産省などの関係行政機関に提案書(報告書)の形で提出したいと思います。
日本の学校給食は世界にも例を見ない、優れたシステムです。限られた予算、設備、時間などの範囲で努力して運用されています。しかし「食育が大切だ」、なかでも「学校給食が大事だ」と言うのならもっとインフラを整備するべきと思います。食事の時間も少な過ぎます。ハード・ソフトの両面から、私達が助言・提言できる部分がたくさんあると感じています。

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