父親の食育〜料理を続けることから気付き発見がある

“パパ料理”とは、男性が妻や子ども家族のために作る、日常的な料理のこと。そこに子どもが“子手伝い”で参加すれば、自然体で父子のコミュニケーションが生まれ、食育にもつながると言う。材料や道具にこだわり、渾身の料理を創りあげる「男の料理」とは一線を画しています。「おふくろの味」から「おやじの味」の輪を広げようと言うパパ料理研究家・滝村雅晴さんに、“パパ料理”と食育について伺いました。

滝村雅晴さんの顔写真滝村雅晴<たきむら・まさはる>
パパ料理研究家、日本食育協会・食育指導士、(株)ビストロパパ代表取締役。1970年、京都府出身。立命館大学卒業後、PR会社、専門スクールなどで広報・宣伝・ブランディング業務などに携わり、退社後の2009年4月から(株)ビストロパパを設立、代表取締役に就任。日本唯一の「パパ料理研究家」として料理教室やセミナー、メディア出演や出版などを通してパパ料理の普及啓発に努める。著書は「パパ料理のススメ 父親よ大志を抱け」(赤ちゃんとママ社)など。

Q:もともと料理好きだったわけではないそうで、料理を始めた動機は

結婚してもずっと夫婦共働きでしたが、6年目に長女が生まれたのがきっかけです。それまでは私も妻もグルメ志向というか、仕事人間だったこともあり、家で食事の支度をするより三食全て外食で食べ歩き飲み歩きが大好きでした。たまに総菜屋さんの弁当を買って帰る程度で、家のコンロを使ったことがありませんでした。
ところが子どもが生まれ、外食ができなくなった、そこで週末に私も料理を始めたのです。経験がないから、レシピ通りマニュアル通りに材料を量って切って、時間を守って煮て焼いて。それで食べたら、ものすごくおいしかったのです。
それまでレストランで食べる味は、プロにしか作れないものだと思い込んでいました。レシピ通り作れば、世界中の料理を作ることができる。それに気づいてからです。色々な道具や料理の本を買いそろえて、レパートリーを広げていったのです。

Q:「男の料理教室」がはやっていますが“パパ料理”はどこが違うのでしょうか

料理を作り始めてしばらく、「週末レストラン ビストロ_パパ」と名付け楽しんで続けていたのですが、ある時から、以前ほどには家族が喜んでくれなくなったのです。妻に聞くと、家族が毎日食べたいのはイタリアンとかフレンチとかにこだわった料理ではない、普通の家庭料理的なものやお惣菜だったのです。
それまでの自分がジャンルにとらわれ、自分の趣味で作っていた、自己満足の料理だったと気づくまでに2、3年かかりました。おまけに作りっぱなしで、洗い物は一切妻任せでしたから喜ぶわけがありません。
“パパ料理”は、趣味で作る「男の料理」とは考え方が違います。ジャンルや材料にこだわったり、自分の趣味や都合で作るのが「男の料理」。“パパ料理”は食べてくれる相手のことを考えて作る、家族のための手料理です。そして、買い物から調理、洗い物、ゴミ出しまで全てやるのもポイントです。

Q:“パパ料理”は父子のコミュニケーションにも役立つとは

家族のために料理を作るのですから、子どもも参加させてもらいたい。そんな思いから役に立つ「お手伝い」まではいかない、ちょっと参加するだけの「お手伝い」を「子手伝い」と呼んでいます。子どもは小さい時ほど、大人のすることを真似したがります。子どもにとっては、お手伝いも遊ぶのも同じ、楽しいのです。
買い物の途中でも、野菜を洗ったり切ったりしながらでも、子どもとは何気ない会話のやりとりをすることができます。日頃からこのように接していれば、子ども達が今日あった出来事など唐突に話しだしても、何の事かわかるようになります。そして晩ごはんも出来てしまうという、一石二鳥です。
また子どもの話をライブで聞けるのは、食事を囲んだテーブルが一番。そこから自然な食育に発展していくと思います。

Q:男性の食育への関わり方については

二つのことが言えると思います。
食事をちゃんと食べない子どもは、空腹だったのでお菓子を食べてお腹がいっぱいになったのかもしれません。そうならお菓子ではなく、少し待たせておいもをふかす、おにぎりを作って食べさせるなどしてあげればいい。でももしかしたら料理そのものがおいしくないのかもしれない。そんな子どもに、野菜にはこんな栄養があって、必要だから食べなさいと言っても通じません。近頃我が家は玄米にしていますが、健康のためというよりおいしいから。土鍋で水加減や火加減をきちんとして炊くと、香ばしくてもちもちして、子ども達も喜びます。まずおいしく作って食べることが第一です。
次に、休日に時々ではなくできれば日常的に、作り続けることです。続けるうちに、自分で気づくことが増えてきます。私も初めは栄養バランスなど余り考えていなかったけど、振り返ると肉料理が続いているなとか、お腹の調子を考えて今夜は野菜中心にしようとか気付くようになりました。

Q:月に2回「パパごはんの日」を提唱している、そのねらいは

「妻が寝込んだ時の料理」エピソードを、昨年アンケートしたところ、こんなイタイ話がありました。「大好きなショートケーキを買ってきてくれた」とか、「激辛カレーを作ってくれた」とか。一生懸命に張り切って愛情表現しようとする努力は認めるけれど、寝込んでいる時、食べられるのは「おかゆ」や「うどん」がせいぜいでしょう。つまり、相手に今、一番喜んでもらえるものが分かっていない夫で、こんな人はもしかすると仕事で大きな失敗をしかねません。料理はTPOが大切なのです。
毎月第一日曜日、第三水曜日はお父さんが晩ごはんを作りましょう…そこから始めて、日常的に“パパ料理”を広めることが目的です。またパパ料理をすること自体が、男性のワークライフバランスにつながるのです。共働き世帯が半数を超え、今後は女性の社会参加がより加速される時、食事の支度すべてを妻にまかせきりでは、父親は家族を守れません。“パパ料理”は父親のリテラシーとして、しっかり根付かせていきたいものです。

ページの上へ