食べ物は“知って”食べれば“身になります”

学校で子ども達に上手な魚の食べ方、おいしさの秘密などを伝える「おさかなマイスター」。08年から始まった資格を真っ先に取得、訪問した学校はすでに今年4校になります。魚嫌いの子どもが多いと言われているのに、これまでの出前授業で接した子ども達に、魚嫌いはむしろ少数派。「何も知らずに食べるより、栄養や働きのことなど、知って食べた方が楽しいし役に立つ。心にも身体にも頭にもおいしいのではないでしょうか」と語る吉野さん。これまでの経験から、子どもの魚嫌いについて伺いました。

吉野利奈さんの顔写真吉野利奈<よしの・りな>
日本おさかなマイスター協会認定おさかなマイスターアドバイザー。他に日本野菜ソムリエ協会認定シニア野菜ソムリエでもある。様々な食材についての栄養、旬や産地、調理など幅広い知識を教えている。都内歯科診療所に勤務の傍ら、学校での食育授業や、カルチャーセンター、企業セミナー等において講師として活動中。

Q:授業はどのような内容でしょうか

主に都内の小学校が対象で、45分間の授業だけの場合と、お魚メニューの給食も連携するケースもあります。導入では必ず「みんなはお魚が好きですか?」と問いかけますが、経験では「好き」と答えた子どもの方が多かったですね。
ただし食べているのはすしや刺身、切り身の焼き魚など。アジのような、頭からしっぽまでの骨付き丸ごと一尾を食べる経験は、ほとんどないようです。ご家庭でもあまり食卓に出さなくなってきたのではないでしょうか。
骨がある魚は食べにくいです。だから「骨について勉強しよう」、そして身体の仕組みと骨格について理解できたらもっと上手に食べられるようになるよ、というのが授業のポイントです。

Q:骨について知ると、上手に食べられますか

授業には教材としてアジを使います。調理室で一匹丸ごと焼いてもらい、子ども達には実際に食べてもらっていますが、お箸を使って上手に食べられるようになります。お箸を使うこと自体に慣れていない子どももいたり、最初は一生懸命に魚と格闘していますが——「丸ごと一尾を食べた」という経験は成功体験として、子ども達の中に記憶されるのではないでしょうか。
魚の中心にある背骨に沿って、身の上からお箸を使って軽く押してから、背骨にそってお箸を入れて開いていくと骨から身を上手にほぐす事が出来ます。焼き立てほど簡単ですね。ヒレや小骨の位置も分かっているので、小骨に気をつけて食べられます。

Q:魚を「知る」ことが身体により「おいしい」とは

上手に食べられれば、「わぁ、きれいに食べられた」と満足でき心に良いことですが、それだけではありません。例えば最近、注目されている脂肪酸のDHAやEPAなどは、焼き魚より煮魚など汁まで食べられる調理法の方が効果的に摂取できます。カルシウムの吸収を助けるビタミンDは魚肉にたくさん含まれていますから、丸ごと食べればより効果的です。魚は貴重な栄養素を含んでいますが、同時にその吸収に役立つ成分もちゃんと持っているのです。
また海草や野菜など、魚以外の食材との食べ合わせを知ることで、栄養の働きがより促進されます。魚にも旬があって、その旬の魚を意識して食べればなお良いですね。

Q:この資格を取得したきっかけは

親類の歯科医院で長年お手伝いをしていますが、そこの院長先生の方針で、食べ物と最初に出合うのが口内なので「噛む」栄養指導に熱心なのです。カルシウムだけではなくビタミン、たんぱく質など、食べ物全てが歯の栄養には関係してくるので、きちんと栄養を摂取するには「噛む」力が大切なのです。
そこで院長先生と相談して、あごの骨を丈夫にしてそしゃく力を鍛える「噛む噛むメニュー」を考え、患者さんや地域の方に対してお話をしていました。その後カルチャーセンターや学校の保護者に、料理教室などでお伝えするようになりました。
「噛む」と言っても、固い物をバリバリ食べることではありません。冬の時期なら大根の葉の部分などの青菜と小魚を使った献立があります。野菜も魚も、よく噛まないと飲み込めないので噛む事に役立ちます。
メニューの研究から食材をもっと勉強するため、野菜ソムリエの資格を取得しました。それから勉強の幅を広げ、財団法人水産物市場改善協会が始めた「おさかなマイスター」の資格につながっています。

Q:魚が「噛む」ことに役立つのですか

イカなどの魚介類や特に青魚の身は、良くそしゃくしなければ消化されませんね。健康教育の研究校のある小学校で見学させて頂いたのですが、空き教室を利用して、遊びながら体力を向上できるような遊具が用意され、休み時間に子ども達が自由に使えるよう開放されていました。その一角の机にはスルメがお皿に盛ってあり、遊びながら子ども達が口に入れて、くちゃくちゃ噛んでいました。
そしゃく力、と言うと大人の方は「今さら——」と言われますが、私は「今だから、です」と返しています。(笑)

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