「日本一おいしい給食」区教育委員会が旗振り

「日本一おいしい給食」を目指して取り組んでいる、東京都足立区の学校給食が全国から注目されています。同区の給食レシピを家庭向けに編集した本『東京・足立区の給食室』も好評です。同区に「おいしい給食担当」が設置されてから今年で4年目。平成20年度当初、小学校9%、中学校14%だった平均残菜率(食べ残し)は、22年度には小学校6%、中学校10%に減るなどの成果をあげています。昨年4月から同担当に着任した塚原邦夫係長に、これまでの経緯や「食育」への取り組み、学校現場と教育委員会との関係などを伺いました。

塚原邦夫さんの顔写真塚原邦夫<つかはら・くにお>
平成23年4月から足立区教育委員会学務課おいしい給食担当係長。同部署の編集協力によって昨年7月出版された『東京・足立区の給食室』((株)アース・スターエンターテイメント発行)は7万部を超すヒットとなった。

Q:「おいしい給食担当」というユニークなネーミングの由来は?

切っ掛けは近藤やよい区長が都議時代に、東京都の生ごみの中で学校給食から出る残菜が最も多くを占めているという事実を知ったこと、もう一つは区内で転校した児童が給食を残さず食べていたのに、転校先では残すようになったというお話を保護者の方から伺い、区長選挙の公約の一つに掲げたことからです。子ども達が喜んで、楽しく残さず食べてくれる給食を実現しようという思いからスタートしました。
区内小中学校で統一基準の残菜調査を平成20年から始め、21年4月に「おいしい給食担当」が設置され現在に至っています。

Q:それによって何がどのように変わったのでしょうか

教育委員会が先頭に立ち「日本一おいしい給食」を目指そうと旗を振ったことは、学校長や担任など栄養士以外の学校現場の、学校給食や食育に対する意識を変える役割を果たしたのではないでしょうか。学校現場には学習指導をはじめ多くの活動や行事、時代の変化と共に担うべき新たな課題がたくさんあります。その中で学校給食は埋もれてしまいがちだったのです。
本区は小学校72校、中学校37校、合計109校の小中学校全てに栄養士が配置され、おいしい給食を担っていますが、校内では栄養士は一人です。学校の食育は栄養士が一人で頑張るより、校長先生をはじめ担任など教職員が一丸となることでより効果があがります。

Q:足立区が目指す「おいしい給食」とは

残菜を少なくすることだけではありません。衛生面やアレルギー対応などの安全性に努めることは大前提として、食材とその生産者や作り手に対する感謝の気持ちを育て、大人になっても思い出に残る楽しい時間であること。 何より食についての興味・関心を持ってもらいたい。口に合うもの、好きなものばかりを食べるのではなく、健康のため大切な食事を選ぶ事が出来る子どもを育てる取り組みです。

Q:具体的にはどのような施策ですか

「食べる意欲向上」、「おいしい給食レシピ集作成」、「指導集作成」という3つのプロジェクトを、栄養士や学識経験者の協力を得て立ち上げました。
「食べる意欲向上」は例えば「もりもり給食ウィーク」で、給食時間内で食べる時間をしっかり確保し、食育としてクイズや食の話題を提供しながら楽しむ工夫を年2回、1週間にわたり全校で取り組んでもらいます。他にも地域に給食の理解を深めてもらう「おいしい給食&食育フェスタ」、中学生のアイデアを募集し給食メニューに実用する「給食メニューコンクール」など。
「おいしい給食レシピ集作成」は全校で共有できるレシピ集です。「給食だより」の作成や家庭用にアレンジした給食レシピを記載する他、次の「指導集」にもリンクし食育の授業で活用できるよう配慮されています。
「指導集作成」は学校給食が食育の教材になるよう、学習指導に沿ったメニューを選び、教科で学んだことと食べる経験で効果的な学習につながります。例えば小学校2学年でエンドウ豆の学習をする場面で子ども達は実際にエンドウ豆のさやをむき、むいた豆は豆ごはんとして給食に出されるというように連携しています。

Q:「指導集作成」の成果はいかがですか

小学校は学年ごとに目標を決めて年1回、中学校は毎月の目標設定で給食時間の5分間に、指導集を使って栄養士が教師と一緒に行う食育に全校で取り組んでもらっています。給食が生きた教材になり学習の定着効果が上がった、全校が共通の指導集を使うので情報が共有でき指導経験の浅い栄養士には実践の意欲が高まったなど、現場から成果が報告されています。

Q:今後の課題は

モデル校4校で平成20年度と22年度に実施したアンケート結果での比較では、給食時間が「楽しい」と感じている割合は、小学生は89%から97%、中学生は79%から82%に伸びました。また、年間残菜率では、小学校9%から6%、中学校で14%から10%に向上が見られ、取り組みに一定の成果が表れていると言えます。
その一方、「身体によいと思ったものを進んで食べる」や「好き嫌いなく食べる」子どもの割合は30%台と低い状況です。
ご家庭でも食育に取り組んでいただけるよう情報を発信するとともに、身体にとって大切な食べ物を自ら選んで食べる子どもの育成に、今後はより重点を置いた取り組みが課題だと考えます。

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