コミュニケーションのスキルをみがきましょう

「学校栄養士はまず、自分自身が精進して『四つの気』を持ってください」…スナック菓子やアイスクリームのメーカー、牛乳や海藻の食品会社などと連携し、さまざまな切り口から食育授業を実践して、今春、東京都の学校栄養士を定年退職した宮島則子さん。今日の「食育」が提唱される以前から、年中行事と結びついた伝統食や地場産物を給食に取り入れるなど、学校栄養士の枠に収まりきれない活動に取り組んで来ました。そんな宮島さんから、後進に向けてのエールとアドバイスをうかがいました。

宮島則子さんの顔写真宮島則子<みやじま・のりこ>
1979年度、東京都荒川区で学校栄養職員に採用される。以来33年間、同区内の小中学校に勤務。今春から定年退職したのを機に、学習院女子大学でフードコンシャスネス講座などで講師を務める他、全国で食育に関する講演活動を行っている。

Q:意欲的な企画の試みが実現できた要因は

常々、食を通じて、子ども達には「元気」「根気」「やる気」「勇気」という「四つの気」を育てたいと思い仕事に務めてきました。
若く意欲に満ちた新任栄養士は、いざ現場に立つと、さまざまな現実に突き当たって心が折れてしまうことがあります。その思いを通すためには自分自身が、「四つの気」を持続できるように精進するしかありません。自校式の場合、栄養士は自分一人です。校内ではなかなか理解されにくい一人職種で、言わば「少数民族」ですから、新たな試みを実践するには、まず賛同者・協力者をつくっていく必要があります。企画立案から連絡調整・運営など全てを自分一人で行うには限界もあります。せっかく素晴らしい企画でも、途中で力尽きてしまうかもしれません。学校給食運営や食育活動は校内組織を活用した取り組みにしていかなければ、継続的、効果的な実践は望めないことを、多くの経験から学んできました。
学校栄養士が校内でその専門性を認められ、確固たる信頼を得るには、栄養的な知識・実践力はもちろんですが、高いコミュニケーション能力が欠かせません。さらにプロデューサーの役割も求められます。そのためには、「井の中の蛙」にならないよう、学校以外の世界にも興味を持ち、自己研鑚に励むことです。情報のアンテナを高くし、常に学び、感覚を磨くこと。さらにチャレンジ精神を持ち、たとえ失敗してもくじけない心と、感謝の心を忘れないことです。

Q:現職最後の食育「東北を応援しよう」の意図は

昨年3月11日の東日本大震災と続いた原発事故災害で、東北地方の方々は地震・津波の被害ばかりなく、大変な風評被害にあわれています。そこで「東北6県を応援しよう」をテーマに東北の文化・産業・暮らし等を学ぶ食育授業と、食材や郷土料理を紹介する給食を組み合わせました。野菜くだものお米、海藻や魚介類など、日頃から私たちは、東北の食材の恩恵を受けて来ました。その事に思いを改め、感謝し、そして皆で東北を応援して欲しいと思ったのです。

Q:その授業ではどのような手応えがありましたか

まず、秋田県の皆さんとのふれあいから始まりました。秋田県は、「なまはげ」のサプライズで盛り上がり「あきた小町・比内地鶏・じゅんさい・しょっつる」などの郷土料理を味わい、第2回の青森県では「ミスりんごさん」による青森県の紹介とりんごの授業。給食では「陸奥湾の帆立ごはん・けの汁・長芋とリンゴのサラダ・アップルゼリー」という青森の郷土料理を堪能しました。第3回の授業は1、2回の楽しさ中心とは異なり、大津波で甚大な被害を受けた岩手・大船渡からわかめの加工工場の方に来校願って、「復興はわかめ養殖から始まった」という話をお聞きしました。事後指導の感想文で子ども達からは「僕たちはわかめを食べて皆さんを応援します」と書いてくれました。またこの取り組みをきっかけに秋田・大曲の小学校との交流も生まれました。同校の子ども達が育て収穫した「大曲花火米」を送って下さったのです。今後も秋田産直送の米や野菜を通して交流が深まっていくことを期待しています。

Q:初めて食育に取り組むようになったきっかけは

学校栄養士として採用されたのが33年前。初任校では、裕福な家庭の子ばかりではなく、学校給食が「命の糧」になっている子どもたちがいることも知りました。全ての子どもは国の宝であり、希望です。未来があります。家庭で日本の食文化や行事食を体験出来ない子ども達にも、ひな祭りのごちそうや端午の節句のちまきなどを味わい、楽しんでほしいと考えました。そして日本の伝統的な食文化や全国の郷土食、旬の食材、さらに健康づくりのための食生活など、学校給食を通して教えられるのではないかとも考えました。食は体験が重要です。豊かな食の体験は生きる力を育みます。私は、自分で出来そうな事は何でも取り組んでみようと決意しました。家庭科の先生や調理員に相談したところ熱心に協力して下さって、学校長からも了解を得る事が出来ました。

Q:立場は変わりましたが、子どもたちや後輩に伝えたいことは

私は長い食育の実践から、食で「生きる力が育つ」と確信しています。食を通じて心身ともに健康になり、食育で得た体験的・実践的な学びを生かし、地球人としての視野を広げて、より良い人生を歩んで欲しいと願っています。さらにそれぞれが自分らしく社会に貢献できる人に育ってほしいと思います。 子どもは日々成長するものですが、身体の成長と共に“豊かな心”を育てることが大切です。心は脳が司ります。毎日の食事から、脳を育て活性化させる「育脳」の食育を大切にしてほしいものです。

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