世界が注目する和食を「和食検定」で体系化

和食の配膳でご飯茶碗は左側。「理由は右手で箸を持つから」…だけでは「では左利きの人は?」という新たな疑問がわく。「日本人にとってお米は神が宿るとされた尊いもの。古来より、左右での上位は左とされてきたように、食材の中でお米は最も貴重なものだから」と、もう一つ奥にある理由を知ると納得でき、さらに日本文化と食文化の深いつながりまでに思いが及ぶ。3年目を迎える「和食検定」のねらいや意義について、同検定を実施する財団法人日本ホテル教育センター主席研究員の菊池かをるさんに伺いました。

菊池かをるさんの顔写真菊池かをる(きくち かおる)
(財)日本ホテル教育センター主席研究員
株式会社なだ万に19年間勤務し、国内外の支店での接客を経て、なだ万新宿小田急店支配人、食品事業本部首都圏営業部部長を歴任。また和食のテーブルマナー講師として学校や企業などで講習会を実施。2010年より(財)日本ホテル教育センターで和食検定立ち上げに携わる。唎酒師、ソムリエ、日本料理食卓作法マスター認定講師、サービス介助士2級
<和食検定=
http://www.washokukentei
.jp/

Q:「和食検定」を創設された理由は?

日本人にとって和食は生まれた時からあって当たり前のもので、私たちはいちいち理由や食材の意味など意識しません。家族そろって食卓を囲む中で、お年寄りや大人から子どもに自然に伝承されてきたので、そうした家庭の教育力がしっかり根付いていた時代はそれで良かったのです。
孤食や個食の時代になってしまった今日の家庭では、日本の料理や食材の特徴、食事の環境やマナーの基本など、知る機会がありません。これまで体系化されたテキストもなかったので、学ぶ場もありません。日本人なら知ってほしい共通の文化・遺産として、検定が一つの学びのきっかけになれば喜ばしいことです。

Q:前例がない中でのご苦労は?

まずテキスト作りから始めました。「和食」の定義からして曖昧な部分が多いので、そこから苦労しましたね。
他の伝統文化同様に和食の世界も“以心伝心”で、先輩から後輩、親から子へと、言葉や文字より見て真似て身体で覚えて伝えてられてきたのです。だから絶対これだけが正解、という考え方はできません。テキストは真理を示したのではなく、原則とその理由や考え方を示しています。
検定やテキストでは「なぜそうなのか」をきちんと学んでもらうことが大切だと考えています。原則を知ったうえで臨機応変に、対応を工夫する事も必要ではないでしょうか。

Q:そもそものきっかけは?

皇室の儀式で海外からたくさんの来賓が来日された当時、私が接客をしていたお店にもある貴賓がみえて会席料理を召しあがりました。お出しした“なます”について尋ねられた時、私は「大根と人参をお酢であえたもの」と材料や作り方の説明しかできなかったのです。後で料理人とその話をしながら、「大根の白と人参の赤は“紅白”を表わし、日本人では古来からお祝いの席で使われています」と背景にある日本の文化を説明しなかったことに気づいた、その時の残念な思いが出発点でした。

Q:海外と接して、日本を自覚する例は多いですね

世界的に“Wasyoku”が注目され、日本の調理法や食材、食事スタイルへの評価が高まっている一方、私たち日本人には日常的な存在のため余りにも無頓着過ぎますね。今からでも改めて和食の特徴を知って、価値に気づいて、もっと誇りを持っても良いのではないでしょうか。
例えばお米は、日本人にとって特別な食材です。白いご飯を、ご飯だけで口に運び、そしてお菜や汁など味の付いた食材と合わせて、口の中で咀嚼しながらいただく“口中調味”は、和食の特徴の一つです。
一方では、最近の子ども達には丼もの、混ぜご飯、ふりかけなどが好まれています。しかし「それは間違っている」と否定するものではありません。むしろお米離れに対して一つの改善方法として有効でしょう。大切なことは、そのような機会に“口中調味”という和食の特徴から、ご飯を中心にした日本の献立の食べ方考え方などを伝えることだと思います。

Q:学校の食育に提言を

コンビニやスーパーのお陰で様々な食べ物がいつでも手に入る、豊かで便利な時代になった反面、子どもも親も食材の旬や本来の姿を知らない人が多くなりました。まずは食材や料理にもっと関心を持つことから始めたらいかがでしょうか。学校は元よりまず家庭で、家族がそろって食卓を囲む食事こそ食育の場です。

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