「食べるミルク」でカルシウム不足を補おう

消費者の目線でおいしくて体にも良いレシピを、と活動する小山浩子さんの長年のテーマは「乳和食」。日本人になじみのある「和食」と「牛乳」を組み合わせた、主食、主菜からお菓子までレシピを開発・提案されています。「減塩というと大人の話と思うでしょうが、原点は子どもの頃の食生活。牛乳を飲むだけでなく、料理に使うことで学校給食の幅が広がるのでは」と、新しい献立を学校現場にも提案してくれました。

小山浩子さんの顔写真小山浩子(こやま ひろこ)
大手食品メーカー勤務を経て、2003年フリーに。出張スタイルの料理教室を立ち上げ、コーディネーター兼講師として活動。ミルクを使った料理レシピの研究・開発に取り組む。現在は年間100会場以上の講演と出張料理教室、企業のメニュー開発、雑誌へのレシピ提供、栄養コラム執筆、テレビ出演等幅広く活動し「ミルクのある暮らし」を提唱している。著書に『頭のいい子に育つ育脳レシピ』(日東書院)、『くらし方が変わる! おうちでごはんを楽しむIHクッキング』(小学館)、最新刊『目からウロコのおいしい減塩 乳和食』(発行:社会保険出版社 発売:主婦の友社)等。

Q:フリーで働く前は大手食品メーカーにいらっしゃいましたが、そこが今の活動の原点なのでしょうか。

小学校低学年の頃に初めてクッキーを作ったのですが、母がものすごくほめてくれ、それがうれしくて作るうちに料理が好きになりました。小さなトースターに始まり高校の時には大きなオーブンレンジを買ってもらい、家族や友達にお菓子やパンを作っては食べてもらいました。おいしいと食べてくれる笑顔を見て「食は人を幸せにしてくれる」と思い、食の仕事につくことを夢見て大学で栄養士の資格を取りました。当時は栄養士の仕事はあまり多くありませんでしたが、友人から食品メーカーで栄養士を募集しているという話を聞き、情報収集をしていく中で、食品メーカーに就職が決まりましたが、入社後は本当に大変でした。
入社1か月で料理教室の講師としてデビューしたのですが、当時の私は講師としての技術も話術も足りませんでした。教室にいらっしゃるのはみんな年上で、人生の先輩方ばかり。理解はしていただけますが、みなさんが求めている新しいミルクメニューを学びたいという期待に応えることが出来ず、自分自身にも満足感が得られず暗いトンネルの中に入り込んだような気持ちで、料理の仕事はもう辞めようと思い悩む毎日でした。

Q:その暗いトンネルからどのように抜け出したのでしょうか。

まずは、栄養士から「管理栄養士」になろうと勉強を始めました。また、当時は実家暮らしであまり料理を作る機会がなかったので、「最短でスキルを学ぼう」と和食、洋食、お菓子、ハーブなど「飲む、食べる」に関連した超一流と呼ばれる方々の教室に参加しました。何度も受講していると、紹介していただくメニューのツボやその先生がなぜ一流なのかという理由がよくわかってきます。感動したメニューは3回真似て調理し、4回目には「私だったらこれをこうアレンジしたい」という気持ちが湧いてきました。
入社5年目くらいになり、ようやく「楽しい」と思えてきたのです。また、年間3000人くらいの受講生の「声」を聞くことで、「材料は少なく、調理はシンプル。だけどおしゃれでおいしくて栄養バランスが良い」そんなメニューが求められていることがわかり、受講生の声を生かしたオリジナルのミルクメニューが誕生しました。

Q:グラタンやシチューだけではない、和食でも使えるミルクメニュー、つまり「乳和食」の原点ですね。

ミルクは栄養価が高く、物価の優等生。さらに飲むだけではなく「食材」にもなります。でも日本の家庭ではミルクを使う洋食はせいぜい月に数回。私たち日本人が毎日食べても飽きない和食にミルクメニューを根付かせたいと思い試行錯誤を続け、だし汁の替わりにミルクを入れた「ミルク茶碗蒸し」を作った際にたくさんのヒントを得ました。まろやかで本当においしいく、だし代わりにミルクを使うことでコクと旨みが増し、減塩にもつながります。
メニューを考案するうちに「ミルク味噌汁」もやってみましたが、これは受講者のみなさんから「家族から毎日は食べたくないと言われた」と聞き、ヨーグルトに変更したところ大好評でした。自分よがりのレシピ開発ではいけないということに気付くことができました。ご飯を炊く際には、牛乳をそのまま加えるのではなく、ひとひねりして、牛乳にお酢を加え「カッテージチーズ」と「乳清(ホエー)」を作り、乳清でお米を炊いてみたところ、お米がツヤツヤと光り輝きとてもおいしくできました。まさに、ミルク料理はおいしさの科学ですね。

Q:ミルクマジックには5つありますが、それは学校給食の献立にも組み込めそうですね。

ミルクマジックには、①牛乳をだしのかわりにする②水のかわりに調味料を牛乳でわる・のばす③牛乳でゆでる・ゆで戻す④牛乳で粉を溶く⑤牛乳にお酢を加える、の5つがあります。おすすめは、かぼちゃの煮物を食べなかった子も食べてくれた「かぼちゃのミルクそぼろ煮」(ミルクマジック②)です。ミルクの固形分が固まることでそぼろのボリュームがアップしますから少量の鶏肉でも十分おいしく頂けます。ミルクを食材にすると予算が増えるのではと考えるかもしれませんが、結果的に栄養価は上がりコストは下がります。子どもたちが苦手な、「乾物」や「豆類」と組み合わせる方法もおすすめ。たとえば「高野豆腐のミルク煮」です。

Q:子どもたちの牛乳離れが懸念される中、料理に使うことでカルシウム不足を補うこともできますね。

10歳から17歳までの間は骨を作る大事な時期で、ミルクにすると1日に900mlがこの時期の子どもたちに必要です。栄養教諭や学校栄養職員のみなさんにお話しを聞くと、「牛乳は太る」と飲まない女の子が小学校高学年くらいになるといるそうですね。実際はそうではないのですが。高校生への食育講演を依頼されることもあり、部活を受け持つ先生に聞くと、骨折する子が増えているそうです。栄養バランスでは牛乳に勝るものはありません。 小学校5年生くらいまでが味蕾の発達するピークで、それまでは苦みや酸味が苦手という子も多いのですが、ミルクを使うことでまろやかになりおいしく食べられます。最近は、牛乳の買い置きがない家庭も多いと聞きますが、「食べるミルク」として学校給食に乳和食を取り入れていただくことで、保護者のみなさんにも成長期の子どもの食の大切さが伝わっていくことと思います。

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