コンビニが「食育」の選択肢を広げる「発信基地」に

 ひと昔前まで、食育とは対極にあるようにも思われていたコンビニエンスストア。現在では生鮮野菜の販売、健康志向型商品の展開など、「健康を支援」する動きがあります。先日終了した文科省の「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」(以下「有識者会議」)の委員を務めた(株)ローソンCEO補佐・鈴木清晃さんは、長寿社会日本において健康寿命を全うするために、「食」と「健康」は企業にも非常に重要な課題であり、学校や地域に貢献する姿勢もあると語ります。

鈴木清晃さんの顔写真鈴木清晃(すずき きよてる)
株式会社ローソン CEO補佐(HR・ヘルスケア担当)兼健康推進プロジェクト。ローソン執行役員サービス本部長、旧郵便局株式会社専務執行役員東京支社長などを歴任し、2013年より現職。従業員の健康診断受診率向上と生活習慣の改善を図る「健康アクションプラン」を推進。2013年より文部科学省食育有識者会議委員を務める。

Q:企業(コンビニエンスストア)として食育に対してどのような姿勢でしょうか。

平成24年度の国民の概算医療費は38・4兆円(平成25年9月10日厚労省発表)となりましたが、高齢化社会である日本の財政に医療費は今後益々影響力を及ぼすことでしょう。「治療から予防へ」と国全体が大きく転換しはじめている中、行政も学校も企業も一体で、「予防」に重きを置いて行動していく時が来たと考えます。
弊社(ローソン)は「マチのほっとステーション」のスローガンを、25年10月から「マチの健康ステーション」に切り替えました。“みんなと暮らすマチを幸せにします”の企業理念の実現が、この変更の「全ての機軸」となっています。

Q:「有識者会議」委員として栄養教諭や食育についてもだいぶ勉強されたそうですね。

平成17年に「食育基本法」を制定した、我が国の人々が「食を大切にする思い」を、更に向上させる為には、「管理栄養士」の皆さんが中核となる事が、ますます重要になってきたと思います。その旗印として、学校には「栄養教諭」が配置され、「食育の軸」として活動、活躍されている実態をこの会議で学びました。
「有識者会議」では「スーパー食育スクール」(=SSS。学校における食育の底上げを図るための事業。外部機関と連携し、科学的な視点を加味した新たな食育プログラムを開発するモデル事業)の設置と、「食育の教科書」について、今後は文科省を中心に推し進めて行く事になり、食育の「新しい到達目標」が明確になりました。これらの活動は、「点」からのスタートですが、「線から面」へと大きく広げて行かなければなりません。その為にも「確実な情報発信」と「学校、自治体、栄養教諭の皆様による実践」が鍵となると考えます。

Q:栄養教諭に対する期待が大きいですね。

食育はすでに「周知から実践」の段階です。食育が正しく周知され、そして当然のように日本全体に実践されて行く為に、「栄養教諭の皆さま」の活躍を期待しています。どうか、全国の地方自治体の首長の皆さまが「食育の重要性」その実践の要としての「栄養教諭の配置の必要性」を再認識し、各自治体の「長期の人づくり・健康づくり」の一環に定め、展開して頂くかを大いに期待し、願っています。

Q:企業として、貴社内の健康への取り組みは。

定期健康診断と再検診の受診率を向上させることが、現在の目標です。受診の勧奨のため平成24年10月に「健康アクションプラン」を立ち上げました。健康診断の結果に基づいて、緊急度の高い社員には課題事項を列記した「アクションシート」による指導を開始。同時に「食事・運動・体重の管理を習慣化するアプリ」を開発。歩数計と共に提供し、会社、社員一丸となった「健康のための生活習慣改善」に取り組んでいます。26年度からは加盟店のみなさんやカード会員への提供も予定しています。

Q:ご自身も利用されているそうですが、データを解析していく利点は。

家族・職場での健康への意識が高まり、健康についての会話が増えました。更に、これまでの健康診断では結果だけを医師に確認、指導を頂いていましたが、この「健康アクションプラン」がある事で、日々の生活習慣改善へと会話が広がりました。

Q:企業の取り組みが学校の食育に貢献する事例になるかもしれませんね。

「有識者会議」で「SSSの設置」の方向性が定まりました。その事業の中でも、この手法は使えるのではないかと思います。例えばSSSの実践校がスマホを使った食育について取り組んだとすると、給食の献立や食事の履歴の情報を蓄積して、食育にそのデータを活かせばより効果的で、科学的な指導ができるようになるでしょう。

Q:今後をどのように展望しますか。

女性が社会の第一線で活躍することがますます多く、重要となってきた今、男性も女性も生涯にわたりキャリアを磨くことが必要になっています。そして「学校教育のあり方」についても、様々な視点から「再構築、再検証すべき時期」に来ているとの話をよく伺います。
そういう状況を踏まえ、「学校給食」「栄養教諭配置」についても、「食育基本法」成立の原点に立ち返り議論する時期だと思います。第2次食育推進基本計画が平成27年度で終了した後、「食育」に関して子どもたちが「すくっと立ち上がれる」ように、国全体でバックアップしていくことが大切だと思います。

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