栄養士は指導者、日々自分を磨く努力を

「栄養士は指導者。そのために何より人間形成であり、自分自身を磨く努力をして下さい」。学校栄養士をはじめ多くの栄養士を育ててきた道家校長だが、毎年の入学式での祝辞や普段の授業で接する学生に語りかける言葉は同じ。大量調理が基本の給食の現場では多数の調理師とのチームワークが欠かせません。そこではまず栄養士の人間性が問われるわけです。

道家元雄さんの顔写真道家元雄(どうけ もとお)
1938年生まれ、岐阜県出身。58年佐伯栄養専門学校卒業後、東京・杉並区立小学校に勤務。60年から2003年まで江東区教育委員会勤務、学校給食の指導、管理、運営に従事。その間、東京都学校給食研究会長、日本栄養士会、東京都栄養士会役員として活躍。99年から武蔵野栄養専門学校に講師として勤務、05年から現職。全国栄養士養成専門学校協議会理事・副会長。主な著・共著書に『子どもが喜ぶ給食ヒットメニューベスト60』、『楽しい行事食』、『なつかしの給食』など多数。

Q:栄養士を目指す学生達にどのような指導をしていますか。

栄養士は指導者ですから、自分を磨いて職場で信頼される人になる努力をしてほしい。基本的な言葉遣い、身だしなみなどは社会人として当然身につけなければならないものです。給食作りは大量調理ですから、大勢の人が関わるチームワークで作る。人とのコミュニケーションがなくては、きちんとした管理ができません。そしてコミュニケーションには相手への思いやりが欠かせません。

Q:思いやりは人間関係での基本です。

献立作成にも、相手を思う気持ちがなければなりません。「栄養士が作った献立は、栄養面は優れているだろうけどおいしくない」と言われることがあります。これは自分の感覚で献立を作り、食べる人の立場に立っていないからです。
例えばお年寄りは、長い食習慣の中で自分のスタイルを確立しています。そのことを考慮しないで、栄養的に野菜が必要だからと、真冬にピーマンやナスを使ってしまう。でも旬の味を知っているお年寄りには、旬をはずれた野菜はおいしいと思えないのです。
ハウス栽培で現在は旬がなく、大抵の野菜が一年中手に入りますが、旬の味にはかないません。冬なら大根、人参、ごぼう、里芋などの根菜類、葉物野菜なら小松菜、ねぎ、白菜、ほうれん草。低温に耐えるため野菜自身が糖度を高めているので、本当においしいです。食べる人の気持ちに寄り添ってほしいですね。

Q:食材の生育や流通の知識も必要ですね。

旬の食材はおいしいだけでなく、栄養価も高く、かつ市場に大量に出回るので普段より値段も安い。大量に調理する場では食材の単価が問われるので、そういった知識は必要です。日々、勉強して下さい。

Q:学校ではどのような指導をしていますか。

実習の時間が多いのが本校の特色で、1年生で週1回の大量調理実習、2年生は校内実習を課しています。
栄養士業務の基本は大量調理です。少人数の家庭料理と比べ、分量や調理法の違いを知識と技術で身につけます。使用する機具も違うので、経験からしか学べません。2年次ではその知識・技術を元に学生自身が、献立作成から給食運営の全般にわたって取り組みます。社会に出てすぐ職場に貢献できる人材となれるよう指導しています。

Q:栄養士=指導者とは自分に厳しくとの意味でしょうか。

人から信頼されるため、どうあるべきかを自分自身で考えることです。信頼がなければ成り立たない職場ですから。
本校では学生に、自分の推定エネルギーの実態調査をさせています。自分の身体と対話しながら、健康管理をできるよう指導するためですが、中には極端にアルバイトの時間が多くて睡眠時間が足りていない学生がいます。授業中に居眠りをするようでは、本末転倒です。将来の指導者としては不適格ですね。自分の健康管理が出来なくては、栄養士は出来ません。

Q:ご自身を振り返り、どのような感想でしょうか。

私は佐伯栄養専門学校の出身で、佐伯矩(ただす)先生の最後の「宿直」でした。先生のそばで食事や身の回りのお世話をさせていただきながら、尊敬する先生の謦咳に触れることができ幸せでした。
卒業時には病院勤務を希望していましたが学校栄養士にご縁があり、杉並の小学校に務めて以来、栄養士として55年勤めてきました。結局、学校栄養士という仕事は自分に向いていたのだと思います。食事を通して人を幸せにすることが出来る、それが栄養士だと感じています。

Q:卒業生をはじめ、現場で活躍している栄養士・栄養教諭に一言を。

栄養士・栄養教諭の本分は「給食管理」と「指導」です。だから何より給食管理を充実させ、給食は生きた教材なのだから、食育の指導にふさわしい献立の考案と実施に努めて下さい。子供達が基本的な食の知識を、給食を通して身につけられれば、やがて学校から家庭、地域へと皆の意識が高められるのです。

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