学校で学ぶ知識は基礎、仕事では日々が勉強

学生にはいつも「今の自分、そして10年後20年後の自分がどのような生き方をしたいのか、常に将来像を描きながら、そこに向かってがんばって」と伝えている蕨迫先生。ご自身の学生時代に恩師から言われた「時代は常に変化する、どのように変わろうと自分をしっかり持って周囲に流されないこと」という言葉を忘れないそうです。これからの食育のキーパーソンは「働くお母さん」だと指摘します。

蕨迫栄美子さんの顔写真蕨迫栄美子(わらびさこ えみこ)
昭和女子大学、共立女子大学大学院卒業。博士(学術)。大学卒業と同時に栄養士、管理栄養士資格を取得、同短期大学部助手などを経て、平成14年から助教授、23年から現職。日本家政学会・日本栄養士会・日本栄養改善学会・日本肥満学会・日本体質医学会・日本臨床整理学会会員。学校・自治体などでの講演多数。19年、全国栄養士養成施設協会会長表彰。

Q:将来の栄養士を目指す学生達に、どのような思いで接していますか。

目の前にいるこの学生達一人ひとりが、次代を背負っていく。さらに食事や健康づくりに携わる職場ならその仕事を通じて、よりたくさんの人々の健康づくりに影響を与えていくのだと思う。職場によって乳幼児、子供からお年寄りまで幅広い世代、一般の健康な方も病気や障害をお持ちの方もと対象は様々。また家庭に入ったとしても年代を重ねるにつれ育児、けがや病気の看護、自分や家族の老後の介護などさまざまな年代の食事管理、健康管理に直面します。
今、私達が大学で教えられることは基礎でしかないのですが、その応用編がこれからの人生に待っているのです。ですから今の勉強を生かして、卒業後にも学び続ける気持ちが大切ですね。

Q:生涯にわたり学び続ける姿勢を養うことですね。

“食べる”とはどういうことか…そこが基本なのでしっかりと教えて卒業させたいと思います。学生の食事調査をしたところ、一人暮らしをする栄養士を目指す学生から、初めて親の有難さを知ったという回答がありました。当たり前に思い食べていた食事ですが、自分で考えて支度することで大切さに気付いたのです。栄養士を目指す学生達なので、元々、食べることには興味・関心があります。
そうではない学生はただ空腹が満たせればいい、また食べたいものを食べるという、とても心配な食事内容でした。前日の残り物や、手近にあるもの、お菓子などで済ませていました。学校の食育の取り組みが始められてから10年ですが、中学・高校までに学んできた食育が必ずしも身についていないという残念な現実です。

Q:学生はこれからの「食育」を託す人材ですね。

「食育」という言葉ができたことで、食について一人ひとりが意識を持つようになったことには意味があると思います。そして今後、本当に実践されていくうえで、キーになるのが「働くお母さん」だと思います。
家庭を持ちながらキャリアを積んで活躍する女性が増えると予想されますが、この方々が食にも高い意識を持たれると、日本の食はもっと良くなると思います。やはりお母さんは家庭内のドライバーであり、潤滑油であり、指導者ですから。そうしたお母さんを育てるのも、これから食の仕事に携わる人の責任ではないでしょうか。

Q:改めて“食べる”とはどういうことでしょう。

“食べる”とは身体づくりですが、食を通じて心を育て、人を育てるもの。単に空腹が満たせれば良いのではなく、そこに「楽しく食べる」、「おいしく食べる」「健康的に食べる」などの付加価値が求められます。食事内容に加えて場の設定や環境、どのような人達と食べるなどをトータルにコーディネートすることも大切です。

Q:卒業生に思うことは。

健康デザイン学科は栄養士、管理栄養士、栄養教諭はもちろん、それ以外にも家庭・理科・保健体育の教員、スポーツや社会福祉など社会の幅広い分野で「食と健康」のスペシャリストを目指す人を養成する学科です。食品学関係だけでなく運動、感覚などの幅広い専門分野から食と健康を学びます。すぐに、管理栄養士を目指す人には別の管理栄養学科があります。
学部・学科の再編成を経て新たな健康デザイン学科がスタートして6年目。卒業生はまだ多くありませんが、皆、資格・知識をいかして頑張っているようです。前職の短大の教え子も含め卒業生から「管理栄養士試験に合格しました」などと便りを頂きます。自分のことのようにうれしいですね。目の前の仕事をこなすだけで大変ですが、その一方では将来の自分を描きながら研さんを積んで欲しいと思います。

Q:ご自身の学校給食の思い出は。

私は、あまり好き嫌いのない子供でしたが、クラスの他の友達ではどうしても野菜が食べられず掃除の時間まで残されていた子がいました。今ではそのような指導はあり得ませんが。まだ脱脂粉乳の時代で、私も得意ではなかったので真っ先に飲んでいました。月に何度かの揚げパンの日だけは、なぜか脱脂粉乳に甘く煮た小豆が入っていて、大好きで楽しみにしていました。

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