学生が子ども達に教える「朝食指導」を展開

ゼミ生を指導して、大学生が子どもたちに教える「朝食指導」の活動に取り組む、高崎健康福祉大学准教授の神戸美恵子さん。簡単に出来る朝食を「自分で作れる」体験をすることが、若者の朝食欠食を改善する一つの切っ掛けになると考えます。この活動を通じて学生は子どもと接する要領を身につけ、将来、食育の指導者となるための土台を培ってほしいと期待します。

神戸美恵子さんの顔写真神戸美恵子(カンベ ミエコ)
実践女子大学家政学部卒業、家政学修士(日本女子大学)、管理栄養士。群馬県職員として、小中学校、群馬県教育委員会、群馬県総合教育センター、太田市教育委員会に勤務。2009年4月より高崎健康福祉大学准教授。「家庭での実践へつなげる朝食指導-中学生を対象とした朝食指導を通して-」(食生活研究 第32巻第5号)他、学術論文・共著書多数。

Q:大学で学生に接して感じることは。

学生は管理栄養士の資格取得を目指して、入学してきます。本学では管理栄養士の国家試験合格率が高く、年度により異なりますがほぼ全員が資格を取得します。さらに本学は卒論が必修です。4年生になると卒論の提出と、並行して3月の国家試験の準備に追われ、本当によく勉強していますね。入学当初からそうした4年生の姿を見ているので、そうすることが当然のように、勉強に取り組んでいるようです。
授業で教えられるのは、基本的で一般的なことです。でも社会に出たら食育の職場で目の前にいる人間は、一人ひとりが違う状態や環境にいる人々です。相手に応じた接し方、指導が必要になります。食育では個々に届く指導を心掛けなくては、一方通行になってしまいます。

Q:卒論と試験準備との重複は厳しいですね。

その時は厳しいですが、その経験が将来に生きるはずです。職場では自分で課題を見つけ、追求していくことが求められます。その手順・方法を、研究を進める中で身につけられるように意識して、私達も指導しています。
学校や地域・職場の食育を指導する立場に立つなら、課題の追求だけでなく、その結果を数値等にまとめて活用する力も求められます。これからは食育も何らかの評価をして、示していく段階です。また校内の他の先生方にも結果を示す事で、共通理解が図れ、連携協力の体制ができるのだと思います。

Q:食育は10年目を迎えて、どこまで定着したでしょうか。

研究室のゼミ活動で、主に小・中学生を対象にした出前授業方式による「朝食指導」に取り組んでいます。ゼミ生が小・中学生に食事と健康について話し、自分で出来る、簡単で栄養バランスの良い朝食作りを指導しています。
この活動は、朝食欠食の“負の連鎖”を断ち切りたいという思いから始めたものです。日本スポーツ振興センターの調査では、小・中学生の朝食欠食率は徐々に改善していますが、お菓子だけなど望ましい内容とは言えないのもがあります。さらには「食事が用意されていないから」という理由が見られます。小学生でも高学年以上になれば、親が用意できないなら、簡単な料理位は自分で作りましょうという提案なのです。
ゼミ生は将来の食育に携わろうとする学生たちです。指導計画や簡単メニューは自分達で工夫しながら考案しています。教育実習とは別の意味で子供と接する経験ができ、子どもたちにはお姉さんお兄さんが身近に感じられ、話を熱心に聞きます。両方にとってメリットがある取り組みです。

Q:どのような調理実習ですか。

生徒一人ひとりが最初から最後まで自分で作る、個別調理の方式です。家庭科の授業で行う調理実習は一般に班別ですから、脇で見ているだけだったり、出来る生徒から指示されて手伝うだけで、実際に自分で作った経験がほとんどない生徒もいます。
「10分で作ろう!朝ごはん」がテーマで、大抵の家庭で身近にある食材で、6つの基礎食品群(3色食品群)がきちんとそろうメニューを、学生が話し合いながら考えます。ごはん食とパン食、それぞれ何種類か定番メニューがありますが、一番の人気メニューは「ふわふわ卵ライス+野菜フリフリサラダ」ですね。

Q:活動の結果はどのようでしょうか。

中学生に行った調理実習の終了直後のアンケートでは「簡単だった」「楽しかった」という感想がほとんどで、半数近くは「家でも作ろうと思う」「家族にも作ってあげたい」と回答しています。さらに3カ月後の追跡調査では、家庭で自分で作った生徒が6割という結果でした。
「思ったより簡単」だったから「家でも作ってみよう、家族にも食べてもらおう」と思えて、「家で作ったら家族に喜ばれた」という成功体験を味わうことで、大人になっても続けられるのではないでしょうか。年齢別で朝食欠食率が最も高い20代30代の食生活が、少しでも改善できれば良いですね。

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