全校生徒の食育データまとめ効果測定へ

高校では数少ない食物関連学科の「食育実践科」を置く同校は、26年度文科省「スーパー食育スクール」(SSS)事業の研究指定を受け、その実践は今年度も継続しています。全教職員を巻き込んで全校生徒に食育指導を行い、意識変化やスポーツ・学習への効果をデータ化して活用する予定です。「地域の小・中学校との交流授業、出前授業などで本校生徒が訪問して行う食育指導では、子供たちがしっかり話を聞くと、喜ばれています」と語る小林清木校長から、同科の指導理念やSSSとしての研究実践の成果を伺いました。

小林清木さんの顔写真小林清木(コバヤシ キヨキ)
学校法人佐藤栄(サトエ)学園・花咲徳栄(ハナサキトクハル)高等学校校長。三重県生まれ。早稲田大学教育学部理学科卒業。専攻は数学 関数解析。1974年に埼玉県立熊谷高等学校教諭となり、以後、県立高校8校で34年間勤務。うち、教頭として2校5年間に続き、埼玉県立福岡高校と埼玉県立所沢高校の校長として6年間在職。08年に学校法人佐藤栄学園埼玉栄高校教頭を1年勤めた後、目白大学、埼玉県の高校で数学の教鞭を執り、13年4月より現職。

Q:「食育実践科」ではどのような教育方針を掲げているのですか。

本校の創設から2年後には「食物科」を併設していますが、そこには、子供の健全な成長には勉強と同じように健康な身体も大切である、という初代校長・佐藤照子先生の母性らしい考えがあったと考えられます。その精神を受け継ぎ、今日の教育目標の一つに「体育を奨励し、強靭な体力と精神力を養い、真のスポーツマンシップの心を育成する」を掲げています。
本科の指導ポリシーは「食育リーダーの養成」にあります。食育は今日の教育課題の最重要課題の一つであり、栄養系大学への進学サポートをはじめ、健康産業・飲食業界も含め将来のリーダーとなる人材を育成します。
海外研修をはじめ本校の特色に国際交流があります。世界から注目されるような調理師、管理栄養士、栄養学者、スポーツ指導者など、食に関する各分野のトップリーダーを育てたいです。

Q:SSS指定校ではどのような取り組みをしていますか。

「食とスポーツ」をテーマに、約1,800人の全校生徒を対象とした食育指導を行い、スポーツにどのような効果があるのかを検証しています。「体育の奨励」を教育目標として掲げる通り、勉強だけでなく部活動も盛んで特に運動部に所属する生徒が多いので、本校の特色を生かしたテーマではないでしょうか。
4月と10月の年2回、「新体力テスト」を実施し、その比較から食育指導の成果を数値化することにしています。一年目の昨年度は本格的な食育指導が9月に始まったところなので、数値的な増加は得られていますが、有為な差はまだ認められませんでした。

Q:食育指導の柱が「アスメシ」「スタメシ」ですね。

運動部の生徒に必要なたんぱく質・カルシウムを強化したメニュー「アスリートメシ」(アスメシ)、希望する生徒を対象に記憶力向上に必要なレシチン・DHA・カルシウムなどを強化した「スタディメシ」(スタメシ)を栄養教諭が考案。食育実践科の生徒が校内インターンシップとして調理補助に加わりました。
食べるだけでなく噛むことの大切さ、それぞれの栄養素の働き、食べ方、生活リズムなどを毎回の食事内容に応じて指導しますが、昨年度は9月から2月までの期間で実施は9回でした。週に1度程度なのでこれは動機付けです。その後、日常の食に対する意識がどのように変化したかが大切だと思います。

Q:どのような意識変化がありましたか。

期間中の意識変化を比較するためアンケート調査を2回行いました。特に変化が大きかったのは乳製品、カルシウム、鉄分の摂取についてで、「とても意識している」「意識している」の合計がそれぞれ12.1%、10.8%、9.2%増加しました。
感想のコメントも1回目では、この取り組みの意味がよく分からない、普段のメニューで問題ないのではないか、などのネガティブな意見が目についたところが、2回目には「身体のことを考えて食べるようになった」「家庭でもリクエストをするようになった」「家庭で食を話題にしたコミュニケーションが増えた」「日頃の食事にも作ってくれる親に感謝する気持ちが芽生えた」など好意的なポジティブな声が増えました。
一方で「アスメシ」「スタメシ」どちらにも参加しなかった生徒が約4割、参加したけれど「食生活の関心に特に変化はない」と回答した生徒が3割弱で、その第一の原因が食習慣について「考えるのが面倒」だという無関心層が存在します。その生徒達にどのようにアプローチして関心を喚起するか、今後の課題の一つとして捉えています。

Q小・中学校への食育の出前授業も好評のようですね。

昨年度は小学校1校、中学校3校に、食育実践科教員と生徒が訪問して出前授業を行いました。小学校では生徒の自作紙芝居の読み聞かせ。中学校は「家庭科」の授業で、イワシを手開きしてつみれ汁を作りました。
調理実習には本校生徒が中学生達の間に助手として加わりいつもの「教えられる」立場から、「教える」立場になり、コミュニケーションの大切さや難しさを実際に味わった良い経験だったと思います。小・中学校からも、年代が近い高校生なので子供達が食に興味を持ってよく話を聞いていたなどの評価をいただきました。

Q:今年度の食育への提言などを伺います。

一般に高校生では、朝食の欠食など基本的な生活習慣が不規則になる年代で、一層の食育指導が重要になります。食と身体に対する知識をはじめ、食材や作る人への感謝の気持ち、一緒に食事をする人への思いやりなども大切です。そこには家庭・保護者との連携が欠かせません。SSSの取り組みのひとつとして、本校はほぼ月刊で「SSS通信」を配布し、学校と家庭の相互通信システムの一環に位置づけています。

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