「食」を介して「人」と係わる給食管理を

給食運営は「食」を介して「人」と係わる仕事。特に大量調理の場では、限られた時間と費用、労力の中で、調理員とも連携しながら、食事する人に対していかに満足を提供できるか…管理栄養士にはそれだけ大きな責任があります。このように語る吉野先生は、栄養士、管理栄養士の養成には座学・理論だけでなく、経験することによる気づきを大切にします。将来の栄養士、管理栄養士を目指す学生には「これで100点満点という終わりがない、常に食べる人のニーズを探り、実践し評価し続けなければならない究極のサービス業」と心構えを指導しています。

吉野知子さんの顔写真吉野知子(ヨシノ トモコ)
管理栄養士、北海道出身。東京家政学院大学卒業後、食品メーカー研究職等の勤務を経て同大学院修士課程、研究科に進む。病院給食の管理運営に携わりながら、管理栄養士養成校の実習生受け入れにも対応。2004年から同学非常勤講師(兼務)、10年より専任講師。日本栄養改善学会会員、日本給食経営管理学会会員、東京都栄養士会理事(09~11)、日本健康医学会評議員(12~)。

Q:栄養士、管理栄養士を目指す学生は人気職種の一つです。

食育基本法の施行などを通じて、食と健康への関心が社会的に高まっていることが背景にあると思われます。それに順じてアレルギー対応や栄養指導、食育への取り組みの成果が、きちんと評価を受けられる仕組みが整ったことも重要です。
本科では学生の大半が栄養士・管理栄養士免許の取得を目標にしています。毎年の就職率はほぼ100%ですが、そのうち8割以上が管理栄養士・栄養士として就職しています。
小中学校の食育指導が進むにつれて、栄養教諭・栄養士や調理員が直接子供達と接する機会が以前に比べ多くなっています。子供のころから身近に顔が見え、活動の姿が見える仕事として理解しやすくなったのでしょう。

Q:学生への指導ではどのような点を特に重視していますか。

資格の取得が学生の希望なら、その希望をかなえさせてあげたいと考えますが、試験に合格することがゴールではありません。資格を持って社会に出て働く、そして現場で役立てる人材となれることです。大学で学んで得た知識や資格を発揮できるためには"実践力"が必要で、その力を身につけて社会に出てほしいと思っています。
栄養学的には理想的な献立を作成できても、それを実際に調理する調理員さんの協力が得られなければ実現できません。また限られた予算や時間内で調理できる献立か。給食運営はチームワークですから、独り善がりでは進められません。実現できない献立作成は、数字合わせでしかないのですから。

Q:実践力を付けるための指導は。

提供した食事に対してお金を頂くのが栄養士の仕事ですから、食べる人の安全と、身体と健康を作るための責任があります。家庭で家族の数人分だけを作るのと違って、何百人もの大量調理をこなすのが給食運営です。献立は本当に自信があるものを提供するように指導しています。
本科では1年次の基礎実習から始まり、2年次から各種の校内・校外実習を取り入れ、実習に時間をかけていますが、実習で作る献立はまず自宅で、自信がつくまで何度でも試作させます。その後、学校内の実習では120食作り、味や見た目はもちろん、時間、量、提供方法まで細部にわたり後輩や教員の評価を受けます。
実際の現場では、想定外な事態が起きるものです。失敗も含めて評価された結果を受け入れることで、実践力が身についていくのではないでしょうか。

Q:運営で最も難しいのはどのようなところでしょうか。

例えば、病気やけがの治療は専門の知識・技能を持った医者でなければ対応が出来ません。それに対して食事はその気になれば誰でも作れ、注文や意見も言えるものです。そして対象者(食べる人)は乳幼児から健常者、疾病のある方、高齢者など幅広く、個々人によりニーズは異なります。全てのライフステージで100点満点の結果を出す事は不可能だとしても、そこに近い満足度をどれだけ提供できるかが評価です。
それには常に探究心を持ち、ニーズを感じ取るアンテナを広げていくことです。終わりのない仕事ですね。

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