"味覚"から"食"への興味を育てよう

「食べ物が持つ色々な味に、小さい頃から興味を持ってもらい、自然な形で食べることを 楽しめる大人になって欲しい」と語る瀬古篤子さん。フランスで1990年に始まった「味覚 の一週間」®の中心は、シェフが学校で行う「味覚の授業」®を通して“4味”を教えるもの。この取組みを日本に紹介し、“うまみ”を加えた“5味”を教える日本版「味覚の一週 間」(以下、「味覚週間」)は今年で5年目。授業への参加希望校が年々増えるなど定着を示す一方、受講した子どもには「料理や食材に興味を持つようになった」などの変化が実証されました。

吉野知子さんの顔写真瀬古篤子(セコ アツコ)
滋賀県出身。1984年上智大学大学院博士前期課程修了。その間フランス関連の輸出入業務 、店舗経営。83年「マリ・クレール・ジャポン」創刊編集員、84年㈱ヴィジョン・エイ設 立、フランス関連アート展などのプロデュース、コーディネートに携わる。92年「フィガ ロ・ジャポン」創刊編集長。同年外資ブランドの日本におけるPR、イベント企画・編集 業務を行う(有)ヌーヴェル・ヴィジョンを設立。2011年から「味覚の一週間」実行委員 会事務局長。

Q:どのような思いで「味覚週間」に取り組まれましたか。

食事は単にお腹を満たすだけではない、食べることで身体をつくり、そして何より楽 しいということを伝えるのがフランスの運動です。当時すでにフランスで20年以上続いていましたから、フランスと同じくらい食への高い感性を持つ日本でも、きっと受け入れられると思いました。ですからその基本を大切にしながら、日本らしさを加えてちょっと違うアプローチを考え、味の基本となる「あまい、しょっぱい、にがい、すっぱい」という4味に加え、日本ならではの「うまみ」を加えて5味としました。

Q:手応えはいかがでしょうか。

始めると子ども達は砂漠に水がしみ込むように、「味覚の授業」を楽しみ吸収してくれました。私達にも予想以上で、それが何よりシェフ達に喜んで頂けました。初年度約100クラスから始まったのが、2年目に約200クラスと増え、お陰さまで今年は30都道府県 157校370クラスで1万491人が参加してくれました。

Q:今年5年目で定着してきましたが、目的は達せられましたか。

「味覚の授業」に毎年参加されている福岡県の小学校で、味の識別能力や食意識などについて効果検証を実施して頂いたところ、味覚認識力の向上が確認できました。それ以上に私としては、“食”への興味関心が高まっている手応えが得られたのがうれしい結果でした。
調査では5味と水で合計8つの溶液を作って識別してもらいました。「味覚の授業」を受講する前では、正解が6つ以上の子が26%でしたが、授業後には2倍以上の56%で、味覚に対する感覚や理解が明らかに向上しています。
さらに授業後の意識面で、5年生(8ヶ月後)6年生(20ヶ月後)に変化を聞きました。半数以上の子が「料理のにおい・香りを感じるようになった」「料理の味が気になるようになった」「家族と一緒に食べることが多くなった」などの変化を見せています。「料理や食材に興味を持つようになった」「苦手な食べ物でも食べるようになった」なども半数近くに上っています。変化の幅は5年生の方がより大きかったのもポイントです。

Q:食意識の変化に貢献していると言える結果ですね。

核家族で親が忙しく、手間をかけた料理が作れないご家庭が増えています。外食や中食が中心になりがちで、濃い目の味付けに舌が慣らされてしまうと、やがて成人病予備軍などの問題が起きて来ます。
味やにおいなど食への感覚が身につくと、自分で食事に気をつけるようになると思うのです。そのきっかけとなることが、この授業の願いでもあります。

Q:今後の課題は何でしょうか。

授業は基本的に学校近隣のお料理人にお願いしているのですが、引き受けて下さる方をもっと増やしたいし、特に和食の講師が少ないのです。そのため希望する全ての学校数に応じきれていません。
また将来は生産者にも授業を行ってほしいと思います。生産者だからこそ食材のナチュラルな味を知っているし、味にまつわる知識や経験などを子ども達に伝えてもらいたいですね。

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