「自分で作る体験」で理解が深まる

小学校家庭科の「出前授業」で、子供たちのみそ汁作りを、鰹節を削るところから学生と共に指導。"だし汁"の味比べなど体験を通して、だしの働きや日本食の良さを理解し、学びにつながる食育を実践しています。食育としては「作る体験を、もっと大切にしましょう」と提案。「自分で作るから見えてくる、色々な疑問にも目が向いて、学びにつながっていく」と語ります。

小口悦子さんの顔写真小口悦子(おぐち えつこ)
東京家政学院大学現代生活学部生活デザイン学科学科長、管理栄養士。東京家政学院大学家政学部管理栄養士専攻卒業。日本調理科学会、日本家政学会に所属。主な論文・著書に「ゆずの利用法開発をテーマとした家政学系女子大学の地域連 携の取り組み(東京家政学院大学紀要)、「シューの空洞化に及ぼす諸条件影響とその機構」(日本家政学会誌)、「地域食材大百科 1 巻 雑穀」(農文協) など。

Q:「出前授業」はどのような内容だったのですか。

本学のある町田に隣接する八王子の市立横山第一小学校で3学期、家庭科の授業の一環で「みそ汁の達人になろう」をテーマに、5年生全3クラスで実施しました。5週にわたる『食べて元気!ご飯とみそ汁!』という単元の3週目で2時間続きの授業でした。主に「だし汁」についての私の講義と、だし汁を作ってそれぞれの味を比べる実習でした。
調理実習のアシスタントとして、本学で教職課程を履修している学生から希望者を募集したところ、ボランティアでしたが6人が集まりました。教員志望の学生でしたので、とても良い経験になったようです。

Q:子どもたちの授業の反応はいかがでした。

実習では児童一人ひとりが鰹節を削る体験をしました。鰹節も削り器も、ほとんどの子ども達が見るのも初めてでした。今では、家庭では滅多に使われませんから。慣れないと危ないので軍手をはめ、おがくずのように削れた実物に触れて、においをかいたり口に入れたり、とても感激していました。
洋食や中華ではブイヨンやガラスープなどを使いますが、それらは何時間も具材を煮込んで作ります。これに対してだし汁は、煮出してすぐ作ることができますが、元となる鰹節は鰹を煮て干して乾燥・カビ付けしてと、幾重にも手間と日数をかけて完成したものです。干しシイタケやコンブ、煮干しも同様です。すでに、それだけ"うま味"が凝縮しているのだという私の説明をよく理解してくれました。

Q:味比べの結果が想定外だったそうですね。

一部のクラスでしたが、だし汁を使わず水だけでみそを溶いた汁が一番おいしい、と答えた児童が最も多かったのです。他に煮干しだし、コンブと鰹の混合だし、全部で3種類の味比べです。水だけの汁は「さっぱりしている」という感想でした。そもそもみそ自体が発酵食品ですから"うま味"を含んでおり、水だけだから雑味がなく「さっぱり」と感じたのは間違っていないと思いました。
煮干しの汁は「においがする」、混合だしの汁は「甘い」という感想の児童もいました。それぞれの素材の性質を言い当てて、的確な表現だったと思います。
だしは素材の味を引き立てるので、他の調味料を少なくすることができることが納得できたようです。

Q:自分で「だし汁」を作ることの意味は。

買えば何でも手に入る時代だからこそ、自分で作る体験が貴重だと思います。作る体験から色々見えてくる、気付くことがたくさんあります。本学では実習・実験を重視しています。例えばマヨネーズ作り。卵黄1個につき150~200gの油を使うので、いかにカロリーが高いか体験で知って学生は驚きます。知識として分かっていても、市販のマヨネーズしか使わなかったら実感できないことです。
本学も鰹節を削ってだしをとります。鰹節は保存性が高く、先人の知恵と食材への思いを学び、素材を大切に無駄なく使う気持ちも、自然に養われます。肉も魚や野菜も生きていたもの、大切に使いたいものです。私たちはその命を、生きるために頂いて、明日は自分たちの身体になることを実感してほしいと思います。

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