栄養士コラム

第74回「『サミット給食』で見える異文化理解」

辻村波

三重県志摩市学校給食センター 栄養教諭

辻村波

志摩市は伊勢えびや的矢かき、あのりふぐなど、三重ブランドとなっている食材をはじめ、豊富な海産物に恵まれた地域です。各学校では地域と連携し、里海学習などで地域の産物や産業、郷土料理等について特色ある学習を進めています。学校給食に取り入れることが難しい食材や調理法が多いため、栄養教諭・学校栄養職員もその取組の中で食育に関わっています。

開催地の決定うけ急きょ計画

伊勢志摩サミットの開催が決定した昨年度から、子ども達が外国の食文化に興味・関心を持つ機会となればと、当初の年間計画にはなかった参加国の料理を取り入れた「サミット給食」を実施しました。約4000食規模の給食センターで可能なメニューの選択、普段使わない食材探しなど、苦労の連続でした。

初めての味と食材も積極的に

食べなれた味のものばかりを紹介するのではなく、初めての食材や味を経験してほしいという思いでメニューの作成に取り組みました。いつものパンではなく、ベーグルやライ麦入りのパンに変えるなど、主食にもこだわりました。
放送資料では、普段のメニューにもイタリア料理やアメリカ料理がたくさんあることも紹介しました。そして給食に取り入れたスープは、日本の「みそ汁」のような存在で、各地域や家庭の味のスープがあることなど、その料理がどのような存在のものかイメージしやすいようにしました。

楽しく学び「赤飯と和食」で締め

子ども達も、学校の授業などで調べた料理と同じものが給食に出たことに喜んだり、初めての味に苦戦したりする様子がありました。ラストは日本の伝統料理「赤飯」と、志摩市や三重県の食材を多く取り入れた「和食」給食でした。
「サミット給食」は単なるイベントではなく、楽しみながら様々な食文化を学び、その国に興味を持つとともに、あらためて日本や志摩市の食文化のすばらしさを理解できる機会となりました。自分のふるさとに誇りを持ち、自然の恵みに感謝する心をはぐくんでいけるような給食の提供と食指導を、これからもすすめていきたいと思います。