栄養士コラム

第83回「震災経験して思う、非常時の食育」

福岡ちづる

熊本県八代市千丁学校給食センター 栄養教諭

福岡ちづる

平成28年4月14日(土)午後9時26分、突然の大きな揺れは今まで経験したことの無い地震でした。私が住む八代市は前震で5弱、本震で6弱を記録。数分おきに起こる揺れは、いつ収まるのかわかりません。テレビでは緊急地震速報が流れ、熊本県に大きな地震が起きたことを伝えていました。阪神淡路大震災を経験した方からの電話で、急ぎ避難用の荷物をまとめるよう助言を頂き、すぐ荷物をまとめ車に乗せました。

非常食の学校給食を実施

同日午後11時30分、教育委員会に報告をするため自宅近くの給食センターへ状況確認に行きました。月曜日には給食を実施するつもりだったからです。建物、機材は無事でした。
しかし、地鳴りと次から次に起きる余震のため、学校再開と給食実施は4月25日からとなりました。余震が続く中で、献立に制限はあるものの給食は無事再開することができました。
平成23年の東日本大震災より、学校では地震、津波を想定した避難訓練など防災教育を実施してきました。学校給食でも災害時の食事について考える必要性があることを栄養教諭、学校栄養職員から声が上がり、非常食が開発されました。この非常食を備蓄し、防災教育、食育として、非常食を使った学校給食の実施をしていました。

全校で「非常食」集会

平成26年、当時に私が所属していた中学校で、非常食について集会を実施しました。その目標と指導の流れは以下の通りです。
【目標】
現在起こっている自然災害について認識する。
給食で非常食を食べることで防災に関する備えを見直す。
【指導の流れ】 
・自然災害を知る。
・9月1日がなぜ防災の日になったのか知る。
・日本で起きた自然災害について知る。
・なぜ学校給食用非常食ができたのか知る。
・自然災害が起こったとき中学生としての心構えをする。
150名の生徒は地震はもちろん、九州に住みながら直撃するような台風も経験したことはありませんでした。自然災害にあったという生徒は数名しかいませんでした。

生徒は自分事として受け止め

それでも、自然災害について説明し、東日本大震災時の福島県の栄養教諭の体験を朗読し、学校給食に非常食を体験することを指導すると、生徒は静かに私の言葉に聞き入っていました。感想も「今まで災害と聞くと建物が破壊されている情景ばかりを思い浮かべていましたが、他に食糧不足による問題も多いということを知りました。災害はいつ起こるか分からないのでしっかり備えたいです」など、自分のこととしてとらえた内容が多く見られました。

非常時に備え食の指導を

平成28年4月14日(金)、まさかこのような大きな地震が来るとは思っていませんでした。自然災害は、どの地域においてもいつ来るかわからないことを実感しました。
栄養教諭、学校栄養職員として、児童生徒に、非常時に備えた食についてぜひ指導していただければと体験したものからの願いです。