栄養士コラム

第91回「食べ物で体をつくり、食べ方で心をつくる」

飯田頼子

兵庫県明石市立沢池小学校主幹教諭(栄養)

飯田頼子

学校栄養職員からスタートして36年、心に刻まれていることがいくつかあります。特に記憶に残っていることを振り返ってみたいと思います。

2校目で残菜ほぼゼロに

まず、赴任2校目の小学校で、子どもたちにもっと食に興味を持ってほしいと様々な試みをしていました。その中で給食の残菜がほぼ出なくなった時、調理員さんに「先生は子どもたちの胃袋を大きくしちゃったね!」と言われたのです。大先輩の栄養職員から「それは最高の誉め言葉ですよ」と言われ、気恥ずかしくも嬉しい気持ちで一杯になりました。

市内給食展をスタート

次に、市内の栄養職員研究会の部長をうけた時のことです。私たち栄養職員の「給食を通じて食についてもっと伝えたい」という熱意を、教育委員会・管理職・教諭に訴え、第1回明石市学校給食展の開催につなげました。全くのゼロからのスタートでしたので、夏休みも返上して準備に臨みました。当日は、予想を上回るたくさんの来場者がありました。翌年から毎年の恒例行事となり今年度で23回目を迎えました。関係者一同でやり遂げた達成感を共有できたことは、その後も大きな励みとなりました。

食の多様化、民間委託で実現

それから、給食の民間委託の導入です。16年前に小学校から養護学校に異動した時に、同校が市内で最初の民間委託校に選ばれました。調理員増という最大の利点を活かし、再調理の中心だった刻み食からソフト食も取り入れ、胃ろうの子どもには給食を胃へ直接注入する対応など、発達段階に応じた食形態の多様化を図り、子どもたちへ最善の給食の提供に努めました。当初は反発もあったのですが、徐々に保護者の理解を得られスムーズな運びとなりました。必要書類作成や新規パソコンの入力作業など、教育委員会や市内の栄養職員に協力をいただいたことは忘れません。

周囲の理解と多くの協力に感謝!

最後は、阪神淡路大震災20年目の節目となった2015年、市の共通献立を独自献立に変更し震災給食を実施したことです。明石市でも被害がでた当時の記憶を風化させてはならないという思いがありました。当初は勤務校だけのつもりでしたが、心強いことに市内2小学校の栄養教諭の賛同があり、3校で実施できました。翌年からはこの取組みが防災教育とも関連を持たせるなどし、市内全小学校で実施されるようになりました。
任期も残りわずかとなりましたが、これからも、栄養教諭・学校栄養職員の皆様が周囲の方々と力を合わせ、食を通して未来を担う子どもたちを育ててくださることを願ってやみません。食べもので体を作り、食べ方で心を作る。そう信じて勤めた36年間でした。振り返ると、周りの方の理解と多くの支援・協力があったからこそ取組んでこれたことだと、感謝の気持ちで一杯です!