栄養士コラム

第102回「地域の生産者グループを食育の核として」

角田まゆ

島根県松江市立八雲小学校 栄養教諭

角田まゆ

松江市八雲町は、松江市南部に位置し、山々に囲まれた緑豊かな地域です。市街地近郊に広がる恵まれた田園環境の特性を活かし、農業の振興を図るとともに、手作りで進めている国際交流・文化交流の拠点として整備が進められています。
八雲学校給食センターは、この特性を活かし、地域に根ざした学校給食の推進を目指し、新鮮で安全な地場の野菜を積極的に給食に取り入れる努力を行ってきました。現在、八雲学校給食センターでは、中学校1校、小学校1校、幼稚園1園の子どもたち650食分を作っています。
この活動の経緯を簡単ではありますが、紹介させていただきます。

一軒の余剰生産物から始まった

昭和49年、ある地区より、農家の余剰生産物として10kgに満たない人参の出荷がありました。それを契機に、地域の食材を学校給食に導入する事の意義が確認され、出荷者も個人から地区内に、さらに隣の集落に、そして全域にと広がっていきました。そして平成元年に「八雲学校給食用野菜生産グループ」を結成することになりました。
この生産グループは、毎年、夏休み中に研修を重ね、品質の向上と集荷量の確保に努めてきました。そして野菜生産者と幼稚園児、小学校児童との教育的なかかわりの場も設け、子どもたちにとって、学校給食がますます身近なものとなっています。

とれたての豆を笑顔で喫食

ある5月の給食メニューで、「グリンピースごはん」を出しました。豆を苦手とする子どもは多いのですが、さやからとれたてのグリンピースを使った豆は、豆自体に甘みがありとてもおいしかったのでしょう。私達の予想以上にとてもよく食べてくれました。子どもたちは「お豆がごはんに、かくれんぼしているよ。おいしいね」と、とてもかわいらしい表現をしながら、ニコニコ笑顔で食べていました。

子供と生産者お互いに顔が見える関係

このような子どもたちの声を生産者の方にも伝えたところ、さらに仕事に精が出るとのことでした。とれたてのものを味わうことは、本当においしいものです。子どもたちもよく食べてくれます。地元のものを使うということは、様々な効果やつながりが広がることだと改めて感じる瞬間でした。
また、学校の近くに畑のある生産者の方もおられるため、「今日は○○さんの野菜が入っているよ」と伝えると、「○○さん知ってるよ!この前、畑から声かけてくれたよ」と、子どもたちにも身近な方々でもあります。作る人の顔が見えると、食べる意欲にもつながります。

積み上げた関係を大切に

私は八雲学校給食センターに勤務して7年になりました。7年のうちには、生産グループを脱退された方、また新たに加入された方、そして高齢で畑仕事が難しくなった方などいろいろあります。本グループは現在の会員19名で、決して大きな組織ではありませんが、今まで積み上げてこられたものを大切に、これからも地域に根ざした給食づくりを目指して、引き継いでいきたいと思います。