栄養士コラム

第103回「いろいろな意見に耳を傾け」

小野寺江梨子

岩手県一関市西部学校給食センター 栄養教諭

小野寺江梨子

「えー、給食もちらし寿司かあ…」。三月三日のひなまつりの給食を前にして、五年生の児童がつぶやきました。それを聞いて、採用になったばかりの当時の私は、「そうか、行事に合わせた給食にすると、お家でも同じものを食べることになる子もいるんだ」と思ったことを覚えています。

給食が児童生徒の手本に

あれから三十数年経ちました。児童生徒が将来に渡って健やかに過ごすための手本になるようにと、給食の内容を考えていますが、「味が薄い」とか「量が多い」とか、「ポロポロで食べにくい」「この組み合わせは合わない」など、子どもたちや保護者の方々、先生方からいろいろなご意見が寄せられます。生きている限り誰でも、食べることに「関係ない」人はいません。

食への意見は関心の現れ

「食」は楽しみであり、それにまつわる思い出もあり、地域性もあることから、「食」に対して誰にでも何かしらのこだわりがあり、好みがあります。毎日みんなが「大満足」する給食にはなりません。それでも「いろいろな意見があるのは当たり前」。でもそれを「話してもらえるのは給食や食べることに関心があるからだ」ととらえ、前向きに話を聞くように心がけています。
施設設備や衛生管理、給食費などを考慮した中で、おいしい給食を安全に提供することはもちろんです。さらに三十数年前の、家庭でも行事食を取り入れていた食事内容と比較して、給食の役割はさらに重要になったと感じます。

正しい知識と習慣は必ず根付く

先日、日本栄養士会雑誌に「大学生において学童期に栄養教諭による授業を受けた経験を持つ者は、生活習慣が良好かつ野菜類および卵類の摂取量が多い」とする実践事例報告が掲載されました。その報告に力をもらい、これからも、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけることができるように、教材となる給食を考え、将来に渡って健やかに過ごせるよう指導していきたいと思います。