栄養士コラム

第107回「人とのつながりが大きな力に」

長尾美香

兵庫県姫路市教育委員会 指導主事

長尾美香

今年度4月より、学校現場を離れ、市教育委員会の指導主事として教育行政の立場で仕事をしています。採用されてから昨年3月までは、単独校調理場のある小学校、特別支援学校で学校栄養職員、栄養教諭として勤務してきました。そのうち、平成28・29年度の2年間は、全国学校栄養士協議会の兵庫県代表(兵庫県学校栄養士協議会会長)として、様々な経験をさせていただく中で、いろいろな人とのつながりができました。

学校栄養職員、栄養教諭としての原点

新任の頃は、小学校が5校しかない町の町立学校に勤務しており、2名の学校栄養職員で献立作成や発注、支払いなど、事務仕事に追われていました。そのとき一緒に勤務していた先輩栄養職員から、給食の大切さ、献立作成に対する責任やその思い、調理師さんとの関係づくりなど多くのことを学びました。私の栄養教諭としての原点はそこで培われました。今も、そのときの気持ちを忘れず取り組んでいます。

食育の重要性

平成17年に食育基本法が施行され、世の中で「食育」の大切さが注目されるようになり、学校でも教育活動全体で食育に取り組むようになりました。
現在、生活習慣の乱れ、家庭の貧困などの課題、食の安全性、食品ロスの問題など子どもたちを取り巻く食環境は様々です。今、取り組んでいる「食育」はすぐに答えが出るものではなく、子どもたちが大人になった時、そして、親になった時、答えが出るのかもしれません。その時に学んだことが何か一つでも食生活に活かされていたらうれしく思います。

大切にしていること

私が仕事を続けてきた中で大切にしてきたことが三つあります。一つ目は、「おいしい給食づくり」です。学校給食は生きた教材といわれますが、価格面や衛生面、調理能力などいろいろなことを考慮して献立作成を行います。様々な制約があり、なかなか理想的な献立作成ができないときもありますが、どんなときもやはり「おいしい給食」を子どもたちに提供したいという思いを忘れず、給食づくりをしてきました。
二つ目は、「食べることを好きになってほしい」という思いです。「食べることは生きること」といわれます。子どものときに、「食べること」に興味を持ち、「食べること」が好きになり、そして「食べること」を大切に考える大人になってほしいという思いで取り組んできました。
三つ目は「人とのつながり」です。多くの職場では、栄養教諭の配置は一人です。一人の力は小さいですが、学校の先生方、調理師のみなさん、保護者や地域の方々、そしてもちろん栄養教諭の仲間など、いろいろな人々とつながることで、大きな力に変わります。いままで、様々な仕事をする中で、本当にたくさんの方々とのつながりができました。私にとっては大きな財産であり、宝物です。不可能を可能にするためにも、人とのつながりは大切です。今まで多くの方々に支えられて、仕事を続けてくることができました。これからは少しでも、誰かを支えられる存在になれるよう、人とのつながりを大切にしながら取り組んでいきたいと思います。