栄養士コラム

第118回「子供たちの学びが深まる食育の実践を」

小間陽子

富山県氷見市立比美乃江小学校 栄養教諭

小間陽子

「私たちといっしょに、子供たちに『楽しい学び』を教えましょうね」。栄養教諭になったときに、職員室でかけられた言葉です。子供たちは、「楽しい!」「すごい!」「へぇ~!」「できた!」といった体験から学びを深めるのだそうです。そのことをいつも心に留め、“食”を通じて子供たちと関わってきました。

大豆を教材に教科書の実体験

家庭科はもちろん、どの教科でも“食”で関わることができます。3学年国語の教材「すがたをかえる大豆」では、大豆を通して言葉と実体験を結び付けることで、文章に書かれている説明文の意味を実感として理解し、読み取る手助けになることを願って実践に取り組みました。
「大豆」という文字で見ると、あたかも大きそうな豆は、実際に触ると小さくてかたく、子供たちは「どうしてこんなかたい豆がおいしい食べ物に変身するのだろう?」と考えます。

実物に触れ目が輝きだした

水で戻した大豆のにおいをかぎ、「まだおいしくない。教科書だと…」とおいしくする一つ目の工夫「炒る」に気付きます。目の前で戻した大豆を炒り始めると、子供たちの目が輝き出しました。「色が変わってきたね」「大豆の皮がひび割れてきたよ」「このにおい、絶対においしいよ」と興味深く観察し、「炒る」という言葉がより身近なものになりました。

炒ってひいて変化に気付く

次に、この炒り豆を石臼でひきます。初めて見る石臼は大きく、炒り豆は上にある穴の中に吸い込まれ、側面からきな粉となって出てきます。子供たちはその不思議さに感動し、炒り豆の時とは違うにおいに気付いていました。実際に石臼ひきを体験をすることで、「石臼ってすごく重たい」「考えた昔の人ってすごいね」と石臼の重さを実感し、大豆をおいしくする言葉である「ひく」という意味をしっかりと理解することができました。
さらに大豆を加工するためには、調理技術が必要です。まだ調理を学習していない3年生が一人ひとり体験できるように、火を使わずにできる湯飲みの茶碗豆腐を作ることにしました。
豆乳に「にがり」を入れて混ぜるとドロリと固まり、豆乳の甘いにおいが豆腐のにおいに変わっていくことを実感しました。

きな粉や豆腐においしく変身

できあがった豆腐に自分たちでひいたきな粉をかけて食べました。「豆腐はプリンみたいにあまいね」「いつも食べるきな粉よりもおいしい」と、教科書の説明どおりに大豆がおいしく変身したことを実感しました。子供たちは、小さな大豆がいろいろな食べ物に変身することを、文章と体験を通して学んでいきました。
これからも子供たちの学びが深まる実践を工夫し、食育に取り組んでいきたいと思います。