栄養士コラム

第124回「生産者を思う食育」

熊野由佳子

愛知県豊川市立国府小学校 栄養教諭

古林郁子

「先生、お皿空っぽにしたよ」「野菜、食べられなかったけどがんばって食べたよ」という本校の子どもたちの声を聞くと、涙が出るほど感動します。食に関する指導をした後の子どもたちの変容を見ると、「やってよかった」と改めて実感し、明日への活力とさせていただいております。

地産地消を追究することで農家の苦労を学ぶ

本校の3年生(2019年度)は、好き嫌いや食が細いため、給食を臆することなく減らしたり残したりする児童が多くみられました。その反面、生産者や生産地域に関心をもつ児童もみられ、食への興味は高いことが分かりました。そこで、学級担任や地域と連携し、地産地消の意義を学びながら生産者を思いやる食育を実践しました。

総合的な学習の時間を中心としたクロスカリキュラム

学級担任と入念な打合せをし、総合的な学習の時間や社会科などと連携したクロスカリキュラムを設定しました。まず、給食の時間の中で、「豊川産大葉の日」に地元の大葉農家さんにお越しいただき、社会科の副読本にも掲載されている地場産物の大葉について学びました。すると、ある児童からつぶやきが出ました。「なぜ、学校給食は地産地消に取り組んでいるの」…その疑問から地産地消への追究が始まりました。
児童たちは、地産地消の意味やその必要性を学んだり、近くのスーパーの産直コーナーを見学したりするうちに、学校給食には地場産物の使用が少ないことにも気づきました。

どうすれば地産地消を拡大できるのだろう

次に、本校に長年米栽培指導に来ている米農家さんから、台風や米価、後継者不足などの苦労を聞いたことから、どうすれば地産地消を拡大できるか議論をしたり、学校給食に地場産物を取り入れた料理を考えたりしました。さらに、学校給食献立表には毎月生産者の写真とコメントを掲載していることから、自分が農家ならどのような思いで農作物を作っているのかを考えたりする活動などを取り入れました。

生産者を思いやる心を育む

「地場産物を食べることが農家の応援になる。農業を続けてほしいから、お代わりをしたい」「一生懸命作ってくれた農産物を残すと、農家の努力が台無しになる」など、児童の興味は食べ物から生産者へと視野が拡大し、農家の心情に迫る発言が出るようになりました。食は多くの人とつながっていること、学校給食の背景には生産者の努力や苦労に支えられていることを児童が理解してくれた活動でした。