栄養士コラム

第127回「体験活動でほぼ残菜なし」

安森葉子

福岡県那珂川市立岩戸北小学校 栄養教諭

安森葉子

給食が再開して5か月。子ども達も、担任の先生方も、これまでの衛生管理に加えて新型コロナ感染防止にも配慮しながら、給食時間を過ごしています。本来なら食事の楽しさを味わう時間なのに、と思い悩んできました。また、限られた条件の中でも、工夫し、可能な限り食育を実施していこうと模索している毎日です。

初めて取り組んだ「お弁当箱の日」

これまで本校は、会食での交流を軸としてきた食育を実施してきました。現在では、実施が難しい状況です。
様々な制限がある中、管理職からの助言で「お弁当箱の日」を実施することにしました。「お弁当箱の日」とは給食で配膳されたご飯、おかずを、家から持参した自分用の弁当箱に子ども自身が詰めて食べるというもので、本校では初めての取組です。

「自分で」食に関わる第一歩

一見して意味があるの?と思われそうですが、この取組は「自分の食事を自分で準備する」第一歩として考えたものです。子ども達が自分の食事を準備する機会を得ることは個人差があり、多くの子どもは親が準備したものをそのまま食べる、あるいは外食などで自分の好きなものを選んで食べるということが殆どではないかと考えられます。「お弁当箱の日」では、どの子にとっても自分が食べるものに意識を向ける機会となり、自分自身の食に関わる活動となりました。

全校での指導が保護者にも届いた

はじめての取組は保護者へのお知らせが大事、ということで学校便り、学級通信等で各家庭に空の弁当箱の準備について載せていただきました。保護者の方からの理解も得られ、当日は無事に実施することできました。また、この日の給食の献立は、和食の煮物や歯ごたえのある食材ばかりでしたが、残食はほぼなく、食育における体験活動の大切さを改めて感じることができました。さらに、この取組でわかったことは、やはり学校での食育は、学校全体の協力が必要であること、指導する先生方の理解があってこそ効果があるということ、その繋がりが保護者の関心を高めるということでした。

「楽しい」と思うことこそ重要

実施前は子ども達がどう捉えるだろうかと気になっていましたが、「おもしろそう」「楽しみ!」と直接声を聞くことができ、後押しとなりました。そして、子ども達が「楽しい」と思うことこそが重要と、さらに思いを強くすることもできました。将来、子ども達が自分のために、周りの人のために食事を準備できる人になれるよう、これからも食育に努めていきたいと思います。