栄養士コラム

第130回「『しぶせん野菜』を介して広がるつながり」

村山佳子

群馬県渋川市東部学校給食共同調理場 栄養教諭

村山佳子

渋川市には、「しぶせん」という名前のついた野菜があります。「しぶせん」とは、渋川市が独自に取り組んでいる選別農薬農法(環境や健康などへの影響が懸念されているネオニコチノイド系や有機リン系等の農薬を使用しないで農作物を育てる農法)のことです。

生産者に選別農薬農法が定着

農林課とJAが協力し生産者へ働きかけて「しぶせん野菜」の栽培が始まりました。また、農林課主導の下、地元の食品メーカー、JA、食生活改善推進員、栄養教諭等が連携して「しぶせん玉葱・しぶせん小麦」と国産の豚肉で作った「しぶせんしゅうまい」を開発し、毎年10月以降の給食で使用しています。

まるで学校給食専用野菜

「しぶせん野菜」の栽培を拡げるため、農林課が核となりJAや生産者等との検討会議を重ねていくうちに、給食で使う数量を算出して栽培をお願いしたことで、「じゃが芋」や「にんじん」も使用できるようになりました。その後、「きゃべつ」「大根」「長葱」「白菜」等も、給食用の栽培が始まりました。
赴任した当時、5000食の共同調理場で使える地場農産物は、「にら」と「青梗菜」だけでしたが、今では、給食で使用する地場農産物の割合が80%以上の日も増えてきました。

給食をより身近に感じ

「しぶせん野菜」は、虫がつきやすく病気にもなりやすいので栽培に手間がかかりますが、子どもたちが食べる給食だからと、生産者の方も一生懸命に栽培してくださっています。
生産者から「種まきしたよ」という連絡。「いつから使えますか」と栄養教諭。「〇〇の畑だから見にきて」とのお誘いなど、給食の食材を通していろいろな方とのつながりが持てるようになりました。
畑で野菜の生育状況を見せてもらい、児童生徒に伝え、生産者から児童に話をしてもらうことで、今までより給食を身近に感じ、よく見て味わって食べる児童生徒の姿を見かけるようになりました。

食べて元気、心に残る給食を

新型コロナウイルス感染症対策により「学校の新しい生活様式」が示され、児童生徒は、前を向いて給食を黙って食べています。先の見えない毎日ですが、給食を食べて、ほんの少しでも児童生徒が元気になってもらえたらと願いつつ奮闘しています。
これからも、安全で新鮮な地域の美味しい食材を使って、生産者と児童生徒の思いをつなぎ心に残る給食を作り続けたいと思う今日この頃です。