栄養士コラム

第131回「残食ゼロへのこだわり」

森田咲紀

愛知県大治町立大治南小学校 栄養教諭

森田咲紀

令和2年度は、コロナ感染対策を考えての会食スタイルや給食指導の見直し、個々の量の調整にも対策が必要となる中、何とかこれまでの残食ゼロは継続することができました。 

きっかけは衝撃の場面から

もう何年も前、以前勤務していた学校に赴任したときのことです。給食時間が終わるチャイムと同時に、何人かの子どもたちが、まるで運動会の「よーいドン」の合図かのように、担任の「給食時間終わったから早く残せよ」の声で、一斉に食べ残したお皿をバケツに空け始めました。その後、さらに数人の子が残食が入ったバケツを「気持ち悪い」と、混ぜて遊んでいるあまりの衝撃的な光景を目の当たりにしたのです。必ず残食ゼロにしようと決意したのはこの時でした。

食育の推進で残食ゼロを達成

それまでは、徹底した厳しい指導で残食が全くないクラス、「無理しなくていいよ」と減らすのも残すのも自由なクラスなどさまざま。あまり無理強いしたり、一部の子が極端に食べ過ぎたり、好きな献立ばかりにして残食ゼロにしても意味がありません。試行錯誤の毎日でした。
現在は学校全体で食育が推進できる体制となっています。給食時間だけでなく学級活動や教科等の時間も、学校全体でさまざまな取組を行いました。保護者への働きかけも積極的に行い、1年後には、ほぼ毎日ゼロが達成できるようになりました。

食べ物を大切にする心から命を大切にする心に!

子どもたちの中には、残食があることを残念に思っていた子や、本当はおかわりしたいのにクラスの雰囲気でできなかった子もいました。そして子どもから「先生がこの学校に来てくれてよかった」、担任から「食育の大切さがわかった」など、うれしい言葉をたくさん聞くことができました。
現在の学校でも、さまざまな取組を行い、ほぼ毎日残食はありません。今勤務している学校は、他校の兼務がないので、日々子どもたちの細かな状況を把握し、できるだけ一人ひとりに寄り添った食育を目指すことができます。
今後も栄養教諭として、子どもたちの健やかな成長のために食育を推進する上で、食べ物を大切にする心が、自分や周りの人の命を大切にする心を育むことを願い、頑張っていきます。子どもたちの笑顔を力に!