栄養士コラム

第145回「コロナ禍は、栄養教諭が食の学びを仕掛けるチャンス」

杉野由起子

愛知県瀬戸市立にじの丘小学校(小中一貫校にじの丘学園) 栄養教諭

杉野由起子

本校は、全国一斉休業中の令和2年4月に開校した小中一貫校です。新型コロナウイルス感染症予防の観点から教育活動が制限され、食に関わる学習活動にも大きな影響がある中、栄養教諭として『食の学びをスタートさせる!食の学びを止めない!』ための試行錯誤が始まりました。

学校で実施する食育の基礎を学び合う

開校直後、食育についての現職教育(注)を計画しました。
中教審答申、学習指導要領の食育の位置づけなど、学校教育として扱う食育の必要性や教育的意義、教科ではない食育だからこそ教科横断的な視点で取り組む必要があることなどを話しました。
食に関連する学習の教科間や学年間の系統性、食との関連が深い教科の単元で押さえることができる食に関する指導や給食の時間の指導の一覧表を活用して、教職員間で協議しました。
各教科の単元の中に食の学びがあることや他教科ともつながっていること、単元の教材として活用できる給食(給食の時間)の内容や教科の学習と給食の時間の指導との関連などを確認し、実際に何をどのように指導するのかを学ぶ時間になりました。

調理実習、どうする?

調理に関わるカリキュラムを提案、実施しました。
加熱による野菜のかさの変化は給食を教材として確認しました。みそ汁の調理では各自が好みの具で作ったみそ玉を、給食の時間に給食室でとったかつお節のだし汁を注いで試食。自分で考えた朝食は夏休みの課題としてiPadでまとめるなどを実施しました。
コロナの感染状況が落ち着いた時期、小6の家庭科では学級の半分の児童が一人調理で野菜炒めを実習する間に、残り半分の児童に栄養教諭が次の単元の学習を進めました。その後、児童を入れ替えて行う2時間完了を、中1の家庭科では鰯の手開き&塩焼きの1時間完了を設置しました。
子どもたちは『自分で調理した』ことに達成感を得ました。担任からは、「調理の技能評価がしっかりできた。この方法はいいね」との評価でした。今年度もこのカリキュラムで実施予定です。

調理は科学!食の科学クラブ

乳化の原理を用いてペットボトルで作るドレッシング、小麦粉からグルテンを抽出して焼いた焼き麩、大根を薄く切り天日で干した切干大根、砂糖の加熱の変化を活用したべっこうあめ作りなどを実施しました。もちろん試食は家庭で行いました。
児童からは「グルテンが小麦粉のたんぱく質だとは知らなかった」、「切干大根って外に干したらできるなら、家でやってみよう」などの感想が聞けました。食品の特性を体感したことで、日頃から口にしている食べ物への見方を変えるきっかけになりました。
コロナ禍だからこそ、栄養教諭の力を発揮しましょう。
   
※現職教育=教職員が重点的に取り上げる教育について学び合う時間