栄養士コラム

第150回「行事食や郷土料理を伝承する役割は、学校給食が担っている!」

村井栄子

公益社団法人全国学校栄養士協議会監事

村井栄子

先般、若い世代の人にいろいろな行事の際の食事について尋ねる機会があり、聞いてみると、人が集まる時は焼き肉や外食であったり、特別のものではなく普段通りの食事だという答えが返ってきました。行事食自体を認識しておらず、お雑煮を知らない人もいました。地域や家庭により様々だとは思いますが、家庭で伝統的な行事食や郷土料理を味わう機会が少なくなっているように感じます。当然、子どもたちも同じような状況であろうと思います。

失われつつある和食文化

行事食にはその行事のいわれや人々の願いが込められています。また郷土料理は地元で採れる産物を上手に活用し、独自の調理法で作られ、今日まで受け継がれてきたその土地ならではの料理です。平成25年(2013年)に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。伝統的な和食文化の良さが評価され喜ばしい反面、保護しなければ失われつつある状況でもあるようです。

「食文化への理解」学校給食法に明記

学校給食法には、学校給食の目標7つの内の一つに、「我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること」と明記されています。すでに私は退職して学校給食の現場を離れて久しいのですが、毎年、4月の入学お祝い給食では、赤飯と春の魚のサワラで歓迎し、3月の卒業お祝い給食では赤飯と出世魚のブリで送り出していました。また、節分、ひな祭り、端午の節句、半夏生、七夕、お祭りなど、節目、節目の行事にはその献立を用いて行事にちなんだ食事について子どもたちに伝えてきました。

ねらいを明確にし食の指導に活かせる献立作成を

栄養教諭等は給食の献立を用いて、食に関する指導を行います。目の前の一食の食事が教材です。学校給食には、教科のように指導内容が決められた教科書はありません。献立作成者である栄養教諭自身が、献立のねらいを明確にして指導に活かせる献立を作成しなければいけないのです。
社会環境や家庭環境等の変化から、行事食や郷土料理の伝承が難しい状況にある今日、教育現場で生きた教材である共通の食事を通して指導できる場の学校給食が、重要な役割を担っていることを再認識して、これからも各地域で特色ある取り組みを継続して実践していって欲しいと願っています。