栄養士コラム

第158回「料理の楽しさを伝えたい」

松本久美

島根県出雲市斐川学校給食センター 栄養教諭

松本久美

栄養教諭なら当たり前と思われるかもしれないですが、私は調理が好きです。調理が好きといっても、私が作る料理は特別凝った料理ではなく、ごく普通の家庭料理ばかりです。

創意工夫の成果が見える喜び

先日ふと、なぜ自分が料理を好きか考えてみました。食べることが好きというのも理由の一つですが、一番は、目の前にある材料を自分の創意工夫で形にすることが楽しいからという結論にたどり着きました。同じ材料であっても調理の仕方や味付けによっていろいろな料理を生み出すことができます。また、最初はできなかった調理方法でも繰り返し作ることで、少しずつできるようになり、その成果が見た目や味に表れることも、私が料理を好きな理由です。では、みなさんは料理が好きですか?また、料理のレシピや作り方をどうやって知りますか?

失敗の経験が次の成功につながる

料理が好きですかの質問については、置かれている環境も人によって大きく違うために人それぞれであり、様々な意見もあると思います。もう一つの質問、料理のレシピや作り方について、私が子どものころ(昭和時代)は、親をふくめ大人や本を通して知る人がほとんどであったと思います。それに対して現在は、ネットの記事やアプリ、動画を通して学ぶ人が多いように思います。 皆さんはどうでしょう?人から教わる、本を調べる、ネットの動画やアプリを利用するなど、何かしらの方法で作り方が分かった後は、そのレシピに沿って料理を作ると思います。最初から満足できる料理ができるということは少ないかもしれません。でも、何度も繰り返して作っていくうちにコツをつかみ、手際も良くなり、上手においしくできるようになります。途中で挫折したり、失敗したりすることも多いと思います。そのできなかったり、思った味にならなかったりという経験が、次にチャレンジするときの力になり、成功へと導いてくれると思います。

あきらめずにチャレンジを

時々、私は料理が苦手、料理のセンスがない、面倒くさいなど、料理に取り組む前からあきらめの声を聞くことがあります。そんな声を聞いた時、私は本当にもったいないと思います。料理は自分の可能性を広げてくれるものです。できない、無理、面倒くさい、その言葉に自分の可能性を閉じ込めることなく、料理にチャレンジしてほしいと思います。 食事作りは毎日のことです。忙しい毎日、すべてを手作りするのも大変です。時には、外食やデリバリーを利用したり、お惣菜や冷凍食品を使ったりして、食卓を整えることも当然あってもいいと思います。 ただ、私は皆さんに料理を作る楽しさを味わってほしいのです。料理が好きと言えなくても、料理は楽しいと言ってくれる方が多くなることを願っています。そして、その楽しさを周りの人達に伝えてほしいと思います。 私は栄養教諭として、これからも様々な形で学校の中で子どもたちと関わりながら、食育を通して「食べること」の大切さを知り、料理を楽しいと言ってくれる子どもたちを一人でも多く育てていきたいと思います。