栄養士コラム

第155回「コロナ禍の体験を通して求められる栄養教諭の姿と学校給食の役割」

長島美保子

公益社団法人全国学校栄養士協議会 会長

長島美保子

長引くコロナ禍や落ち着かない世界情勢など、子供たちの置かれている状況は必ずしも平和で幸せな状態とは言い難い日常があります。 いかなる状況にあっても、「食」は命です。日々の学校給食を教材として、「食を営み、楽しむ力」「たくましく生き抜いていく力」を子供たちに身につけさせること。不測の事態を乗り越える健康な身体をつくること。このことこそが栄養教諭である私たちの使命だと思います。 栄養教諭制度創設から17年が経過しました。閉塞感に覆われた不自由なコロナ禍の中で、「栄養教諭だからできる」「栄養教諭でなければならない」職務の在り方も見えてきました。

顕在化している子供たちの健康課題

子供たちの食に関する健康課題も多岐にわたりますが、それぞれの子供たちに責任をもって向き合う立場として、栄養教諭の役割は重要です。私たちは、栄養学等のエビデンスに基づいた知見を活かし、学級担任や養護教諭、学校医等と連携を取りながら、継続的に、該当児やその保護者に対して適切できめ細かな指導・助言を行っていく必要があります。 学校給食を教材として示しながら、具体的な食の指導ができる者は栄養教諭以外にありません。

学校給食は、身近で具体的な食の教材

給食指導や食に関する指導を効果的に行うためには、年間の指導計画を見据えた献立作成が必要です。地域の食材を効果的に活用して多様な食品を組み合わせ、四季折々の行事や食文化を織り交ぜた魅力的な給食は、子供たちの心に届く一番身近な教材です。 「思い描くことができる食事の見本」―これが、学校給食でありたいと思います。

時代に対応した食育の取り組み

私たちは、このコロナ下でICTなどの通信環境を手に入れることができました。逆境の中で苦しみながら、そこから大きなものを手に入れることができるのだと実感しています。私たちも積極的に、時代に乗っていくことが必須です。子供たちの健康課題や学校給食の実施状況等、データの集積を分析して、根拠に基づいた情報発信を行うことができます。 タブレット端末などICTを活用した食に関する指導では、動画を取り込んで紹介するなど臨場的な指導ができます。時間的・空間的制約を超えて、多くの学校・多くの子供たち、また家庭や地域社会に瞬時に伝えることも可能です。積極的に、ICT環境の中に自分を置いてほしいと思っています。
学校給食や栄養教諭が行う食に関する指導が広く理解されるよう、日々研鑽を積みつつ、頑張って取り組んでいきましょう。