栄養士コラム

第172回「食を通した喜び」

山極昌代

神奈川県横浜市立都田西小学校 栄養教諭

山極昌代

横浜市立都田西小学校は930食、ドライ方式の学校併設の単独調理場です。

卒業生との出会い

今年度になり横浜市教育委員会の行政職の方から「私は○○小の卒業生です。山極先生ですよね」と声をかけられました。「いつも給食の時間にカルちゃんを連れて来てくれたことを、よく覚えています。先生と近くで給食が食べられることを、小学生の時、とても楽しみにしていました。この部署(健康教育・食育課)で仕事ができてうれしいです」と話してくれました。
カルちゃんは、以前、全国大会の記念販売品で購入したフエルトの人形です。その後自分で作り直して、現在は7代目になり、今も給食時間や食に関する授業で活用しています。その内容を覚えてくれている大人になった卒業生に出会えたことが、最近の励みになっています。

和食器で給食

6月末に食器メーカーから和食器をお借りすることができ、和食献立の日に6年生に和食器で給食を提供できました。事前指導で各クラス1時間、使う和食器の絵の意味を考える授業を実施しました。和食器の柄の一つである唐草文様(からくさもんよう)は、古代ギリシャの文様の影響を受けていること、箸置きに使われていた「結び」の形は「人と人とのつながりを大切に」の意味があることなどを伝えました。
当日は6年生のご飯や魚献立の残菜がほぼゼロでした。感想の中に「和食の文化は世界とつながっていることがわかった」、「食器が素敵なのでご飯がおいしくて、いわしを食べきることができた」、「いつもの牛乳も甘く感じた」という声もありました。給食を通して自国の文化を知り、国際理解献立からは他の国を尊重している意味がよくわかったという声もありました。

時代が変わっても

ICT活用で小学生一人ひとりにタブレットが導入され、授業中に提出物を集める、全校児童のアンケートを集約するなど、スピーディで便利な時代になりました。
しかしながら「自分で食べて自分の体を作る」ことは時代が変わっても変わらないことです。また遠隔で話を聞くより、直接生産者の方と話をする、農作物の収穫作業をする、魚に触ってみるなど、子どもたちには「直接的な体験」が必要であることがわかってきました。さらに養護教諭と連携した、保護者・児童の個別的相談指導も重要な仕事です。
教材となる給食を計画的に提供し、全職員で食に関する指導を進められるようにしたいと思います。