栄養士コラム

第173回「子どもたちの成長が仕事の活力」

柴田芳枝

広島県広島市立白島小学校 栄養教諭

柴田芳枝

広島県の中西部に位置する広島市は、北を中国山地、南は瀬戸内海に面し、自然と都会を身近に感じる地域です。白島小学校は、広島市の中心部に位置しています。
広島市は統一献立の自校式給食とセンター方式の給食に分かれていますが、本校は自校式で、校舎の北側に給食施設があります。そのため給食を作る香りが教室まで届き、子どもたちはその香りで、その日の献立を当てることができるほど給食が身近な存在です。

時間内で食べ切れたAさん

本校の食育の目標「食の大切さに気付き、感謝して豊かな食生活を実践しようとする子供の育成」を目指し、食育の取組を行っています。栄養教諭として自分の仕事の活力となっているのが、子どもたちの成長。そこである児童の成長を紹介します。
1年生のAさんは食が細く、入学当時から給食を減らし、時間をかけて少しの給食をゆっくり食べていました。少しずつお箸で、ごはん粒をつまんでは口へ運ぶ状態です。これは入学当初の多くの児童の給食時間の様子でもあります。私は毎日、1年生の教室を見て声掛けをしていますが、すぐに食べられるようにはなりません。
それが10月ごろ、担任の先生の「時間内に食べたらシール」などの様々な取り組みもあり、あんなに小食だったAさんは、給食時間、大きな口を開けてパクパクとごはんを口へ運ぶようになり、時間内に給食を食べられるようになっていました。

目を輝かす授業づくり

次の年の授業での話です。2年生は、生活科でミニトマトやピーマン、きゅうり、なすなどの夏野菜を育てています。その授業と関連させ、学級活動で自分たちが育てている野菜からどんなパワーをもらえるかを学習する内容でした。野菜のパワーを4つに分け、にんじんマン(人形)を登場させ、担任の先生には、マー君人形を動かしてもらい、にんじんマンとマー君でかけあって、野菜の4つのパワーについて話しました。
4つのパワー「ピカピカパワー」「バリアパワー」「うるおいパワー」「ぱっちりパワー」を人形劇で話したあと、子どもたちに体で表現してもらいました。みんなの前で思い思いのパワーを表現し、その中に、積極的に手を挙げて、みんなの前で大きく手を広げてパワーの表現をするAさんの姿がありました。この授業で、きらきらした子供たちの目とAさんの成長が印象的でした。1つひとつの教科等における食に関する指導で、子どもたちが興味を持ち、目を輝かせることができるような授業作りをしていきたいと感じました。

受け継がれる食育の基礎

2つ目の成長のエピソードです。私が以前赴任していた小学校の卒業生が、先生となり、現在、勤務する小学校で再会を果たしました。その先生は、私や私が給食時間に教室を訪問した際、いつも手にしていた「カルシウムのカルちゃん」のことを覚えていました。カルちゃんが教室へ来るのを楽しみにしてくれていたそうです。食の大切さを子どもたちに伝える給食指導をする立派な先生に成長していました。
子どもたちは成長し、生涯にわたり、食と向き合っていかなければなりません。小学校での食育がその礎となるよう、これからも食育を進めていきたいと思います。