子どもが初めて作る料理としておにぎりは最適です
日本の学校給食は「おにぎり、漬物、塩じゃけ」から始まったとされている。今日の学校給食でも行事食やお楽しみ給食等で登場する機会が少なくない〝おにぎり〟だが、身近すぎて、存在意義や地域の食文化との関わり、歴史など、学んだり調べたりする機会は意外に少ない。「多くの子どもにとって、初めて作る料理がおにぎり」と語るおにぎり協会代表理事の中村祐介さんに、おにぎりの魅力を聞いた。
中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)
1975年生まれ。株式会社エヌプラス代表取締役、2014年設立の一般社団法人おにぎり協会では代表理事を務める。2015年ミラノ国際博覧会の日本館で、おにぎりをテーマにデモンストレーションで海外から注目。国内外の様々なイベントや、心からおにぎりを愛する「オニギリスト」の仲間づくりなどを通して、日本食に欠かせないおにぎりの情報を発信している。
Q:おにぎり協会を設立した背景・経緯をお聞きします。
私自身がもともとおにぎり好きで、原点は母が作ってくれたおにぎりをよく食べていたこと。そして海外の方と一緒に仕事をする機会がある中で和食の話になると、おにぎりについて質問されることがあります。でも詳しく説明することができなかったので、自分で色々調べ、他にも広く知ってもらうため手探りで2014年に協会を設立しました。
2015年ミラノ万博や2016年国連持続可能な地球環境会議等の国際的な場でもデモンストレーションの機会があって、おにぎりや和食の魅力を伝えられました。
Q:おにぎりの魅力とは何でしょうか。
日本料理の懐石料理では様々な料理を頂いた最後に出てくるのがご飯であるように、白米の白いご飯は〝ごちそう〟だったのです。炊き立てのお米を握り〝おもてなし〟としてお土産に持たせる文化です。
おにぎりは誰かを応援したり慰労したりする時に作ります。〝だれかのため〟に作るのです。勉強を頑張る子どもの為にお母さんが夜食として握ってあげる、古くは戦場に出撃する夫の為に妻が作って持たせることもあったでしょう。
Q:食育の観点からおにぎりのメリットは何でしょうか。
多くの子どもは、最初に作る料理がおにぎりではないでしょうか。おにぎりを作るためにはまず手洗いが大切です。ここから手洗いの重要性に気付いてもらうことができます。そして普段は食が細い子どもでも、おにぎりなら食べられます。
具は何でも好きなもので良いのですが、お米に合う地場の食材を考えることで地域の良さを自然に学ぶことにつながります。また地元のお米を使えば生産者にも喜ばしいことではないでしょうか。
Q:協会には子ども達から様々な質問が寄せられるそうですね。
宿題の自由研究に関連して、子どもの質問が先生からまとめて送られてくることがあります。よくある質問では「おにぎりはいつ頃からあるのですか」、「おにぎりとおむすびの違いは何ですか」、「1個のおにぎりは米粒が何個ぐらいですか」など。
当協会Webページの「おにぎり検定」には、これらの質問を含めおにぎりに関する基礎知識を掲載、楽しく学んでもらえます。ここでは「オニギリスト」の育成を目指しています。
Q:「オニギリスト」とは何でしょうか。
「おにぎりが好き」で「おにぎりを語れる」ことが条件で、協会に登録すれば誰でも「オニギリスト」を自称できます。おにぎりの魅力を国内外に発信するため、おにぎりの正しい知識、日本の食文化の理解を深めてもらいます。
現在は最年少5歳の男子が登録されています。
Q:新たな活動の予定はありますか?
年内にオンラインで、親子おにぎり教室を開催する予定です。おにぎりはあまりにも身近過ぎるため、正しい作り方など教えてもらうこともなかったと思います。このため、形が崩れることを恐れて強く握り過ぎ、食べる時は固まりになってしまったなどの失敗もあります。しかしプロが握ったおにぎりはまったく違います。
教室ではお米の炊き方、水分量の見方からはじまり、おいしく食べられる握り方など、プロからしっかり指導をうけられます。
Q:学校給食や食育について感想や提案等ありますか?
子どもにとって家族以外の人と食事をする機会が給食で、その体験ができる良さがあります。日本の食文化でも〝供食〟はとても重要で、人間としてのコミュニケーションを学ぶ場の一つです。戦後のパンとミルクの給食から近年は米飯給食が中心になったので、ご飯に合うレシピをもっとたくさん開発していただきたい。また出来るなら部活等で運動をする子ども達に向けて、運動の前後におにぎりを提供してあげられれば理想的です。効率よくエネルギー補給ができるおにぎりは、アスリートが実践に取り入れているものです。